2月3日S「F」作:宮森さつき、演出:木崎友紀子

青年団リンクに騎の会、こまばアゴラ劇場。端田新菜と多田淳之介の二人芝居。女は不治の病を患っているらしい。また、それを治療する新薬の検体者ででもあるらしい(報酬金が出ている)。その女を献身的に介護する男がいる。はじめは分からなかったが、この男はロボットなのだ。この二者が春は桜見物、夏は浴衣で花火、秋も深まると部屋にクリスカスツリ-を飾る。そういう四季の風物をめぐっての淡々としているが、実のこもった会話や、たとえば浴衣をそれぞれが着こなすなどの所作が演じられる。浴衣の正式な着方は、ロボットがネット学習したのだ。部屋にはベッドでもある大きなテーブルと片隅にブランコがある。そして冬のある日、女は死ぬ。女とロボットは人間とロボットの境界を越えようともがく。だが、ロボットはちょっとでも人間の食べ物を口にすると故障してしまうのだ。平田オロザは教授を勤めている大阪大学でロボットの芝居を上演して客を感動させたという。平田はその成功で”私はこれでスタニスラフスキーに勝った”と思ったそうだ。なぜならロボットには内面がないのだからと。しかし、多田が演じたロボットは人間より細やかに女に接しており、また作者、演出家、女優の女性三人のあってほしい男の理想像ともとれるので、とても内面がないとは思えない。これは生身の人間が、見かけは人間そのままで演じるので、内面をすべて排除するのは不可能であろうが。端田の企画の芝居だが、なかなか心に迫るいい舞台だった。端田の鬱屈しながr必死に生きようとする演技も、多田のロボットもとてもいい。特に多田はなんともいえない雰囲気を醸す優しい魅力が横溢するロボットを演じて忘れがたい。
★三浦大輔が監督した映画「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を見た。いままで数々の演劇人が映画を撮ったが、三浦の映画は演劇人が監督した映画として最高の出来だ。演劇臭がまったくないまさに映画そのものだ。三浦ファンは必見だ。
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# by engekibukuro | 2010-02-05 13:23 | Comments(0)  

2月2日M★「えれがんす」S★★「標的家族」

★作:千葉雅子、演出:千葉雅子、SISカンパニー、紀伊国屋ホール。かって栄光に包まれたアスリートやその関係者の後日談。みなさまざまな運命をたどっているが、どうも少し本が弱い。それを渡辺えり、木野花、梅沢昌代の三人のベテラン女優が、漫才を演じたり、目一杯に盛り上げてカバーして、楽しめる舞台に仕上げた。さらに客演した、あの「焼肉ドラゴン」でその演技に目を見張った韓国のコ・スヒが素晴らしかった。その存在感、実質感はベテラン三人に十分すぎるくらいに拮抗していた。
★★作:佃典彦、演出:小林七緒、流山児★事務所、スペース早稲田。
佃のテクストがいい。鋭利で巧みで面白い舞台だった。特定の家族を標的にして、子供じみた悪意でその家族の不幸につけこんで一家を破滅させてしまう、今の日本人の徹底したエゴイズムの荒廃感が舞台にむんむん漂よった。小林の演出もきっちり佃のテクストを生かした立派なもので、美術の小林岳郎も狭い空間を驚くほど立体的に見せた。演技陣も客演の下総源太朗を中心に文句のつけようがない芝居に仕上げた。ただ、最後に近づくと、盛り上がりが過剰になって批評性が薄れてゆき、スペクタクルになってしまった感じが残念だった。
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# by engekibukuro | 2010-02-04 13:37 | Comments(0)  

1月29日S「MANSAI●解体新書 その拾六「依代」

ー宿りというポイエーシス(創造)-野村萬斎芸術監督 第十六弾。今回のテーマは「依代(よりしろ)」。神の御霊を降臨させる媒体としての「依代」。神が依り憑く「もの」「時」「空間」「人」を例に、そこから<藝術の起源>について考える試みだ。ゲストは写真家・美術家の杉本博司、藝術人類学者の中沢新一。まず、萬歳が翁・三番叟を舞う。能については中沢が専門であることは周知のことだが、杉本がこんなに能に詳しいとは知らなかった。NYで古美術商をやっていた杉本は、鎌倉時代の面を持参して萬歳につけてもらう。二人の話は弾んで、能という日本の藝術の素晴らしさをしらずしらず体得させてくれる話だった。中沢が語るのは”「翁」と「三番叟」は数ある日本芸能の中で、ももっとも古い来歴をもち、もっとも深い思想と意味を内包した、おそるべき芸能の表現なのである”に要約される。また、別の話で、杉本が映像を担当したというU2の9万人の客を集めたバルセロナでのコンサートの熱狂する会場を映した映像を見せ、ロッカーも異教の神の依代だという話も面白かった。「解体新書」は演劇にかかわるとみなす、あらゆる分野の芸術家、学者、芸能者を呼んで話を聞き、演じる試みだが、大変貴重な機会を与えてくれている。今回も1日だけということもあるが、立ち見がでる大盛況だった。昨年の「国盗人」の演出・主演、「能の現在形」の企画・演出、この「解体新書」と野村萬斎の伝統演劇を現在の演劇に繋げる作業は着実に成功してきている。
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# by engekibukuro | 2010-01-30 07:34 | Comments(0)  

1月28日M・邦楽コンサート「獅子虎傳阿吽堂」世田谷PT

世田谷PT芸術監督の野村萬斎の肝いりで企画されたコンサートで今回で5回目。父ー能楽師葛野流太鼓方人間国宝、亀井忠雄、母ー歌舞伎囃子方田中流、田中佐太郎のもとに生まれ育った、亀井広忠(能楽師葛野流太鼓方)、田中傳左衛門伝(歌舞伎囃子方、田中流十三世家元)、田中傳次郎(歌舞伎囃子方)の三人兄弟が1997年に結成した三響会が主催するコンサート。囃子を通じて能と歌舞伎それぞれの伝統を踏まえた、新しい可能性を追求している。
 まず三人が今回の番組に出演する能の観世喜正、大太鼓の林英哲、歌舞伎の片岡愛之助を紹介し、色々話を聞くレクチャーがある。それに加えて観世喜正の指導で今回の演目「高砂」の謡の一節”高砂や、このうら舟に帆をあげて・・・”を会場にいる全員が謡う。
 ・林英哲の迫力満点の大太鼓ソロ「宴」、観世喜正が舞う能「高砂」、片岡愛之助歌舞伎立方で踊る「老松」、この三つの出し物で、それぞれの囃子を三人兄弟が勤め、今回の総イトル「松」にふさわしい正月らしいコンサートだった。
 
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# by engekibukuro | 2010-01-29 08:43 | Comments(0)  

1月26日★Mー劇団民芸★★Sー阿佐ヶ谷スパイダース

★「巨匠」(作:木下順二、演出:内山鶉)、俳優座劇場。冒頭はポーランドの劇場の楽屋の場。「マクベス」の初日が迫っているが、マクベスを演じる俳優のある特定の台詞の言い方が、演出家の気に入らなかったが、最後の最後の稽古でちゃんとした出来になった。これにはこの俳優の忘れられない曰くがあった。場がポーランドがナチスドイツに占領された頃に変る。小学校の教室に窮乏生活を強いられている何人かの人々が住んでいる。その教室にこの俳優が若いころ紛れ込んだ。そこに力はあるが売れない俳優と自称している巨匠と呼ばれている老人がいた。若い俳優はその老人からマクベスについての薀蓄を聞かされる。その前夜、パルチザンが鉄道を爆破した。教室にゲシュタポが乗り込んできて、爆破の報復に知識人を4人銃殺すると宣言する。巨匠は身分証明書を調べられるが、それは簿記係の証明書だった。老人は知識人とはみなされない(俳優は知識人なのだ)。今までの触れ込みの手前、ゲシュタポの前でマクベスの台詞を朗唱する。結果、俳優だとは認められたが銃殺されてしまう。簿記係りなのか売れない旅役者だったかは判然としないが、とにかく俳優であることが夢だったのだろう、そのおかげでちょっとした弾みで殺されてしまった。冒頭の俳優には若い頃のこの出来事での老人のマクベスの朗唱に思い入れがあったのだ。老人を演じるのは84歳の大滝秀治。何回かの上演で名演技と博された持ち役。連行されるとき、ちらっと若い俳優に微笑む演技がなんとも複雑微妙で忘れがたい。一寸事々しい面はあるが名作だ。パンフで、その大滝へのインタビューを劇評家の木村隆が行っている。これが面白い。木村は聞きにくいことをバンバン尋ねる。民芸のパンフのインタビュー記事は木村の担当だが、これは毎回面白い。一種の芸だ。新劇の盛んな頃は民芸のパンフは役に立った。その頃は芝居はテーマを把握するのが基本で、幕間にパンフを読むとそれがきちんと解説してある。アングラ芝居にはパンフがなくて途方にくれた。それがよかった、自分で考えるしかないからだ。
★★「アンチクロックワイズ・ワンダーランド」(作・演出:長塚圭史)本多劇場。長塚がいちゃたんじゃないかとおもうほど、ワケがわからない芝居だった。だが、人間の生存の表面的な事象をすべて捨象してしまい、生存感覚だけに絞って物語をつくれば、こういう芝居になるんだとは思う。客の負担感が重過ぎる難はあるが、こういう芝居で2時間もたせる力量はさすがだと思う。新しい局面を拓く、すがすがしい第一歩だ。
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# by engekibukuro | 2010-01-27 11:32 | Comments(0)