2月14日M「ピランデッロのヘンりー四世」シアタートラム

作:ルイージ・ピランデッロ、英訳:トム・ストッパード

、翻訳:小宮山智津子、演出:白井晃。串田和美+白井晃共同プロジェクト。偽狂人のヘンリー4世を演じるのが串田。たしかに串田はきちんと演じていたし、松井るみの白一色の美術もキレイだし、白井の美学が貫かれている舞台だったと思う。だが、ストパードの訳に白井が手を加えたテクストは話が割り切れすぎているような気がする。ただ復讐のためだけのよう狂なのか。これはかって劇団雲で上演され、芥川比呂志がヘンリー四世(タイトルはイタリア語の「エンリコ四世」だった)を演じ、芥川のよう狂王の不気味な不可解な表情が目に焼きついているせいかもしれない。ピランデッロの不透明で不可知の世界の厚みがあまり感じられなかったのが、千葉哲也、秋山菜津子を加えた意欲的な作品だっただけに、ちょっと残念だった。
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# by engekibukuro | 2009-02-15 10:56 | Comments(0)  

2月12日S「ネズミの涙」こんにゃく座世田谷PT

作・演出:鄭義信、作曲:萩京子。ウイシンの快進撃が続いている。昨年の小宮孝泰の一人芝居「線路は続くどこまでも」も小品ながら感動的だったが、この舞台は傑作だ。こんにゃく座は30年ちかく観ているが、この舞台はこんにゃく座の日本語創作オペラの目標を達したものだろう。登場するのは天竺ネズミの旅回りの一座。芝居の品ベースはブレヒトの「肝っ玉おっ母か」。ただし一座の移動は幌車ではなくおんぼろバス。またリーダーはおっ母だが、ダンナがいて息子と娘の4人家族。一座の出し物は4人でできる西遊記だけ。「肝っ玉」と同じく、世界は戦争の渦中。どぶネズミ軍とクマネズミ軍が戦っている。戦場を旅して興行する一座の劇中劇がふんだんにちりばめられて、ウイシン独特のユーモアたっぷりで賑やかに進行する。なにより驚いたのはこんにゃく座の俳優たちの演技水準の急激な上昇だ。いままでは歌の場と芝居がともすれば分離していたのが。今回は歌も芝居も渾然一体で見事に融合している。萩の曲も韓国の打楽器サムリノリを取り入れて、芝居の一つの脈として染みとうるような曲だ。だから歌と芝居の境目がない純然たる歌芝居になっていた。兵隊にとられて惨殺される息子、どぶネズミの奇襲を町にしらせるためバスの上で太鼓を連打して銃殺される娘。一家はつぶされ、米粒より小さいネズミの涙が世界を覆う。それでもおっ母はどぶネズミに呼ばれても興行を続ける。それしか生きてゆく術はない。なけなしの元気で何とか生き続けるネズミたちの姿は今の我々の姿だ。それを歌うラストの合唱は感動的だ。鄭義信が貧乏ネズミたちにあくまで寄り添う姿勢は彼の劇作群を貫いている。是非観ることをお勧めする。14日(土)は13:00、19:00、15日(日)は11:00、16:00。世田谷パブリックシアター。

 
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# by engekibukuro | 2009-02-13 13:37 | Comments(0)  

2月11日M★「俺の宇宙船」S★★「床下のほら吹き男」

★作・演出:前田司郎、五反田団、三鷹市藝術文化センター星のホール。舞台はテーブルがばらばらにいくつかあったり、奥は舞台を横切るスロープがある、全体の感じが遊技場のように見える広い空間。幕開きはスーパー勤めの女性三人の務め帰りのなんてことない会話で始まるが、そのうちの一人君江は実は仕事外では秘密探偵だった。目下の捜査の急務は、この街、五反田界隈で小さな子供たちがいなくなっている事件。この事件を食用に供するため街の鳩を撃つのを生業にしている親をしらない少年たちで組織された彼女の配下である「少年探偵団」と一緒に解決すべく活動中だ。彼女の犯人の目星は「善良な宇宙人」ではないかということで、また少年たちが住んでいる五反田界隈の暗闇が無くなっているのも、「善良な宇宙人」の仕業だという推理だ。突き詰めた結果は犯人は君江の夫だと思わざるを得なくなった。なぜなら彼の足の裏の紋が以前と違って逆巻きになっているのを発見したから。宇宙人だといわれた夫(演じるのは前田)は・・・・まあ前田流の五反田メルフェンの世界だ。話もヒトも他にごちゃごちゃいろいろあって、流れるように自在に芝居は広がる。君江を演じる川隅奈保子が芝居の牽引者でなかなか魅力的で面白い。前田ワールドを堪能できるのたが、前田の芝居に常に伏在しているボールのシンコのような人を寄せ付けない硬い芯のようなものが今回は感じられなかった。なんだか飽和状態をきたしたような印象を禁じえなかった。
★★作・演出:土田英生、MONO、吉祥寺シアター。4人姉妹が暮らしている旧家の床下をインチキリフォーム会社が姉妹を騙して工事するのを、突然床下の奥の扉から出てきたばりっとしたスーツ姿の男がインチキを姉妹にばらす話だが、このほら吹き男があまりに嘘っぽくてのれない芝居になってしまった。だがMONOの芝居の魅力は、劇団員5人、水沼健、奥村泰彦、尾形宣久、金替康博、土田の独特のリズムの会話の面白さだ。土田が他劇団に書く芝居ではこれがない。女優陣もこの会話の面白さに感染されて、話の成り行きより、この会話の面白さで十分もつ。今回は芝居の中身はちょっと残念だったが、他劇団にはないそれぞれ異なる持ち味の強烈な個性をもつ俳優たちは健在だった。創立20周年の公演だそうだが、今後も大いに期待できる。
☆二つの小劇場の芝居を観て、今の大不況の現実への対応度が低くなっていることも感じざるをえなかった。
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# by engekibukuro | 2009-02-12 14:38 | Comments(0)  

2月10日S「ちちゃなエイドルフ」あうるすぽっと

作:ヘンリック・イプセン、上演台本:笹部博司、演出:タニノクロウ、主催メジャーリーグ。一見昔の新劇の舞台を観ているような気分になった。出演は勝村政信、とよた真帆、馬渕英俚可、野間口徹、マメ山田と、演出のタニノを含めて、美術の朝倉摂を除けば新劇とは全く無縁のひとたちだ。タニノが小劇場の演出家で、前回の同じイプセンの「野鴨」の演出も今まで観たことのないような舞台だったので、このテクストにまったく忠実でまっとうな舞台は以外だった。役者も役作りに熱心に取り組んだことがよく解るきちんとした人物像を見せていた。だから2時間強の舞台は緊張が途切れない立派なものだとは言える。「エイドルフ」は人間と人間の間の暗闇を救う象徴なのだろう。また、あらゆる小劇場の風潮がどん詰まりに来ていて、イプセンのような古典作品と、その人間探求に目が行く、原点回帰のような舞台だったとも思えた。しかし、タニノがこの舞台で何を伝えたかったのかは判然としない。「野鴨」はイプセンの世俗的・市民的リアリズムの魅力を鬱蒼とした森のなかで伝えてくれたのだが。タニノはパンフで「私は演出家ではなく「ちちゃなエイドルフ」をよく読んでいる人です」と書いているが、それならよく読んでいない我々にも今の我々の生活にこの作品がどうつながるかのヒントを示して欲しかった。
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# by engekibukuro | 2009-02-11 12:00 | Comments(0)  

2月9日M★「続々オールド・バンチ」S★★「電波猿の夜」 

★平均年齢80歳近いメンバーのパラダイス一座もこの第三回最終公演でめでたく、おしまれつつ解散だ。第一回公演での初々しさからセリフを忘れても堂々と処理するヴェテラン役者に変貌した。作:山元清多、演出:流山児祥、音楽:林光、美術:妹尾河童。幕開き、92歳の戌井市郎が真っ赤なドレスを着て登場、林光が「カルメン」をピアノで強弾する・・満場がどよめく・・。
今回はバンチノメンバーはゲイになった。皆きらびやかな女装で登場する。しかし、今回はドラマらしいドラマはなくて、カラオケ大会の様相で、それぞれお得意の出し物を披露した日た。中村哮夫はかって越路吹雪主演の「王様と私」を演出したので「シャル ユー ダンス」を越路風に歌い、今回初参加のふじたあさやは尺台を置いて講談の赤穂浪士を一席、戌井は心内「蘭蝶」を気分よさそうに語った。また瓜生正美がセリフを忘れると客席のテッペンから流山児が大声で叱咤訂正する。最終公演だからお祭り気分が横溢して客もノッテいた。それと映像出演だが岩淵達治が「ビルマの竪琴」の水島上等兵がタイで生き残ってハッピーな老後を送っているという設定で、ステキなタイ美人とさんさんと陽光きらめく南国の風景をバックに実に楽しそうに歌っていた。今回の音楽・ピアノ伴奏の「謎のピアニスト」林光が童謡からクラシック、軽音楽まで弾きまくって素晴らしかった。流山児の大将の自負自讃も大拍手で賛同しよう。なにしろこれだけのメンバーを集めたのだから。上記の名のほかに高橋悠治、本多一夫、肝付兼太、二瓶鮫一、故観世栄男、写真の荒木経惟、大将の牽引力の凄さだ。劇場は本多が初出場だという本多劇場。
★★作・演出:深津篤史、桃園会、ザ・スズナリ。舞台中央に2段ベッド。ベッドを三方から囲む衝立にはなにやら植物をデザインした模様が一杯に描かれている。ベッドの上下に男が寝ている。下の男はバイト先のハンバーガー屋が倒産して失業状態らしい。舞台にはヤモリだというキグルミを着たイキモノがうごめいている。話はその男の夢らしい。色んな男と女が現れては消え、ヘンテコなイキモノがうごめき、二人の妖精だという女が上段に居座った。夢だから万事話が四方八方に飛ぶが、それを受け入れるしかない。夢の極私性そのままだ。だが役者たちが素直に夢のエレメントを演じているのが感じがいい。その素直な演技が、一つのあたたかいような、わびしいような一種の幸せな世界をかもしだしていた。それぞれのイキモノやヒトが感応しあっている親密さがもたらしたものだ。深津独自の世界だ。
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# by engekibukuro | 2009-02-10 14:50 | Comments(0)