人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「日陰者に照る月」「三人の女」「あれから」「人類館」

12月15日M「日陰者に照る月」(作:ユージン・オニール、演出:西川信広)文学座、吉祥寺シアター。石ころだらけの荒地に住む荒くれた粗暴な農夫(加藤武)とその娘のあばずれ女(富沢亜古)とNYに住むその農地の地主の息子(菅生隆之)の3人のドラマ。この教養のある息子はあばずれ女に屈折した心情を持っているう。農夫と娘は息子を騙して大金をせしめようとする。あばら家の庭での会話劇。オニール晩年の作。3人のドラマはオニールらしいファンダメンタルな愛や性、肉親愛の問題をさらけ出すドラマに深まってゆく。この芝居はオニールの人物をゆるみなく演じた3人の役者が素晴らしい。文学座の底力だ。特に加藤は私の見た限りでの舞台では最高だ(元来、映画やテレビのほうが目立った)。
12月15日S「三人の女」(作:岡田利規、演出:竹中直人)竹中直人の会、本多劇場。竹中が岡田に普通の芝居を書いてくれと依頼した。よくわからない芝居だが、それを芝居らしくして客にとどけようとする荻野目慶子、中嶋朋子、佐藤直子の力演が感動的だ。
12月16日M「あれから」(作・演出:ケラ)ケラマップ、世田谷PT。ハリウッド全盛期のパラマウント映画のようなロマンテイックコメデイを思わせる。ケラは自分の発想を自由自在に表現できる円熟さをも感じさせる。渡辺いっけい、高橋克美、余喜美子、佐藤ひとみ、山西惇とケラの新世帯の演技陣がケラの目論見を成功させた。出色は赤堀雅秋、作者でなく役者でもこんな破天荒な芝居ができるとは!
12月16日S「人類館」(作:知念正真実、演出:幸喜良秀)劇団「創造」早稲田大隈講堂。国立近代美術館の「沖縄・プリズム1872-2008」の関連イベント。1日かぎりの無料公演。1978年に沖縄の劇団「創造」が初演した、岸田戯曲賞を受賞した作品。この芝居は沖縄を考えるときの古典だ。あらゆる沖縄の問題が網羅されている。けっして、イデオロギッシュな告発劇ではない。この上演でも沖縄の人々の心情が波打っていた。大隈講堂満員の客が万来の拍手でこの上演の終幕を迎えた。

by engekibukuro | 2008-12-17 10:30 | Comments(0)  

<< 「スタンレーの魔女」「ウインド... 12月13日M「ロゼット」HA... >>