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5月31日★M「ユ-リンタウン」★★S「黒手帳に頬紅を」

★脚本・詞:G・コテイス、音楽・詞:M・ホルマン、訳:吉原豊司、台本:坂手洋二演出:流山児祥、座・高円寺、流山児★事務創立25年記念公演。流山児が初めてブロードウエイミュージカルを演出した。スタッフ、キャスト総勢50人の賑やかな舞台で、土日は高円寺名物の阿波踊りが幕開き前にサービスされる。話は近未来地球中の水資源が枯渇し、悪辣な資本家と権力がつるんで、それを理由にして大小便の排泄を法律で有料公衆便所の使用に限定、立ちションなどの個人排泄は禁止、見つかれば逮捕され、ユーリンタウンに送られる。
あいつぐ値上げで貧乏人は公衆便所を使えなくなって・・というもの。中心は資本家の純情な娘と、資本家に反抗する貧乏人の若きリーダーとの恋物語。1幕目はユーリンタウンの謎をほのめかす、千葉哲也演じる警官の狂言回しが面白く、ブレヒト、ワイル風の歌で盛り上がり快調だ。しかし、2幕目からは話のムリが目立ち、それを説明するだけで一寸緩むが、それをガンガン歌でカバーし、また流山児がいままで「歌と踊りの恋物語」の芝居を多く手がけた腕前が生き、それに塩野谷正幸、伊藤弘子、千葉の渾身の歌と芝居が舞台をそれらしいミュージカルに仕立てあげた。とくに塩野谷の歌の上手さに驚いた。6月28日までの長期公演、私の観たのは三日目で、これからどんどん練れて来た面白くなるだろう。
★★作・演出:唐十郎、唐組、雑司が谷鬼子母神境内。この芝居も大貫誉の作曲のリリカルな歌を唐と役者陣が歌う歌芝居といってもいい。南の国の炭鉱が廃坑になり、鉱夫に配られた失業手当用の黒いカバーの手帳が、東京の南千住あたりに流れ着いた元鉱夫が死んで、その手帳の行方を巡る物語。舞台は三ノ輪のお汁粉屋。その店に出入りする元上野でやっていた似顔絵描きの三人組とか、様々な唐ワールドの面々が、手帳のページを染めている血痕の謎に挑む。南の国の廃坑の斜坑の奥の闇と、東京の場末の町の闇と通底しているのだ。その着想が面白く、舞台を広い世界に投影させ、歌のリリシズムとあいまって、唐ワールドの新局面をおおいに感じさせた。そういえば「文学界」6月号に岩松了が書いた文章を思い出した。岩松が唐十郎に聞いたはなしだ。あるとき唐が岩松に「岩松君、僕は芝居が終わったとき、一本のリリカルな線が走ればいいんだよ」と。それ以来その言葉が岩松の信条になっているそうだ。この芝居は見事にリリカルな線が走って終わったのだ。役者では丸山が劇団を去ってしまったのがさびしいが、唐さんの娘さんの大鶴美仁音が少年役で初々しく舞台を光らせていて、唐組の新しいチャームポイントになってゆく予感がした。・

by engekibukuro | 2009-06-01 17:09 | Comments(0)  

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