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8月30日M「304」(作:蓬莱竜太、演出:茅野イサム)

あうるすぽっと。この芝居は2004年にOFF OFFシアターで初演されたそうだ。1時間ちょとの小品だが、思わぬ傑作だった。蓬莱の力量をまざまざと感じた。池袋北口のふるびたアパートの304号室。この部屋に数年前高校の同級生だった男4人と女ひとりがたむろしている。ボスのマツザキは不在であとの4人がゴロゴロしている。この連中はマツザキがもってくる怪しげな仕事をしている。簡単な仕事のわりには報酬がいからだ。ただ、仕事の内実はマツザキは知らせない。知らないことが条件なのだ。連中はマツザキの秘密を知りたがってその話をしているが、マツザキが現れるまでの会話が上手い。マツザキの出現をいやおうなく期待させる。現れたマツザキは不可解で不気味な男だった。その日の仕事は鞄をどこかのロッカーに入れてくるだけのことだったが、鞄の中を絶対見てはいけないと厳命されていた。それをなんかの拍子に見てしまった一人が余りの驚きで鞄を届けず隠してしまった。中身は芝居の最後まで分からない。これでマツザキの仕事は破綻した。マツザキの兄という中年男が現れキレまくってマツザキをボコボコにする。仲間は解散する。これだけの話だが、舞台は得体の知れない不安感が充満して緊張感が募ってくる。ゴロゴロしている男女の下らない会話とか振る舞いが一つ一つ生きていて芝居の芯を深めてゆく。現今の壊れた社会を体感させるようだ。蓬莱の劇作術に感嘆した。茅野の演出も丁寧にテキストを生かす。マツザキを演じた青柳翔が不可解で複雑な男の存在感をじかに感じさせ、平良政幸の兄の怖さが圧巻だ。他の役者も役と実生活が密接だからか、ものすごくリアル。舞台劇でしか味あえな面白さを満喫させてくれた。

by engekibukuro | 2009-08-31 14:41 | Comments(0)  

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