人気ブログランキング | 話題のタグを見る

7月9日(金)M「受付」(作:別役実、演出:K・KIYAMA)

名取事務所、「劇」小劇場。新井純、吉野悠我の二人芝居。1時間足らずの芝居のパンフに扇田昭彦、七字英輔、もなもとごろう、田之倉稔の力が入った解説が載っている。この芝居、神経科クリニックに来た男が、女性の受付係りにわけのわからないことをいわれ、翻弄されていうままにまってしまう。「安楽死の会」や「角膜譲渡の会」やほかの色んな会に入会させられてしまう。こんなのあり?ただのコントじゃないか・・・と思ってしまう客がいてもフシギじゃないが、パンフを読めば、なにやら難しい芝居らしい。ここらへんがきわどくて、芝居を思い返して確かめるうちに、「受付」の意味が深そうだと思い始めて広がってくる。解説という媒介がぜひとも必要で有効なのだ。我々は日々、なにかに受け付けられたくて暮らし、果たして世界に受け付けられるのだろうか、さらにもっと超越的ななにものかに受け付けてもらえるのだろうか、その不安を操作、翻弄する「受付」係りにどうやって対抗するのか。新井純の演じる受付の勝手さ、傲慢さは、そういう抗いがたい魔力を十分感じさせた。K・KIYAMAは、そういう滑稽さと演劇的メタフジイックの機微をよく描き出した。

▼メモ。与那原恵「わたぶんぶん」(西田書店)読了。”わたぶんぶん”とは沖縄の言葉で”おなかいっぱい”の意味。著者の父母は沖縄人。沖縄の料理のことを中心に、様々な沖縄の人々の交流や想い出を書いた本。著者の生まれ育った豊島区の椎名町は、私と同じ。お父さんが常連だった池袋のおもろは、いま私が土曜日に必ず行く店。そういう親近感があるうえに、著者の親戚の文化人古波蔵保好はじめ、沖縄の素敵な人々を紹介し、沖縄からボリビアに移民した人々を取材したルポもあり、なにより沖縄料理の案内が、実においしそうだ。全編気持ちの良い筆致で感動した。

by engekibukuro | 2010-07-10 11:33 | Comments(0)  

<< 7月10日(土)M「変身」(原... 7月7日(水)S「ファウストの... >>