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1月9日(日)M「愉快犯」(作・演出:中屋敷法仁)

柿食う客、東京藝術劇場小ホール。
 「柿食う客」の芝居は初見だ。なかなか刺激的な舞台で、新しい世代の台頭を感じさせた。舞台は扇を開いたような末広がりの新春らしい明るいカラフルな傾斜舞台。何不自由もない金持ちの一家の話で、祖母、両親、息子がでてきて、その息子の姉がいたのだが、その姉は不審死した。その姉の不審死をめぐる物語でその捜査にあたる女刑事もでてくる。しかし、この芝居は話の中身は、この劇団の、中屋敷の独特の身体表現の手段、とっかかりでしかない。台詞一つでもしゃべるのに、体を全力であらゆる形に変形させる。俳優一人ひとりが独自の型をもっていて、それがイレギュラーなスタイリシュな舞台をつくってゆく。要所にキの断絶音、和楽、洋楽の断片が挿入される。遊戯感覚が満ち溢れた舞台で、こういう舞台に接すると、芝居の内容、テーマとかの既存の概念をあてはめても無意味。さらに毎日やるというアフタートークで中屋敷が、自分は自己嫌悪というものを感じたことはない、両親にほんとうにかわいがられて育ってきたと、自然に昂然と話すのをきくと、屈折がないあるいは無視するまったく新しい世代が登場したと感じざるをえない。これは岡田利規や松井周の世代の次の岩井秀人や柴幸男と共通する世代なのだろう。この世代は、既存の劇評家の言辞など意に介さないだろうし、今の生きてゆくのが困難な時代の若者には、こういう自分を全面的に肯定せんとする真摯な姿勢の芝居は一服の清涼剤であり、おおいに共感できるのだろう。
▼メモ。嬉しかった話・・団地の恒例の新春餅つき大会の福引で一等賞が当たった。といっても布のショピイングバックにトイレットペーパー
が8個入っているだけ。それでも今年の一等賞。それと劇場で今はさいたま支局にいる前の朝日の演劇記者だった藤谷さんに会ったら、暮れのさいたま劇術劇場の「美しきものの伝説」のオレのブログを褒めてくれたこと、またさいたま藝術劇場のプロヂューサーの渡辺さんも来ていて、そのブログを楽屋に貼ってくれたと・・。そしてこの芝居が読売演劇賞の作品賞を獲ったそうだ。よかった。

by engekibukuro | 2011-01-10 07:40 | Comments(0)  

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