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1月11日(火)M「超訳ロミオとジュリエット」楠美津香・楽園

 まったく未知の人だった楠のシェイクスピア一人芝居。「ロミオトジュリエット」の登場人物を全部演じる。最初に黒板にこの芝居の人物たちの相関図を書き、その人物たちへの彼女の解釈もする。彼女は、シェイクスピアが格調高い劇作家というような権威主義を払拭して、”シェイクスピアは壮大なスケールのギャグを作った詩人です”といい、芝居もとても下世話なものだとして、この超訳の人物設定でもジュリエットの乳母(ばあや)は大変な酒飲みで、ジュリエットの母はヘビースモーカーにして、彼女らの出番には杯片手、タバコをすいすいの所作でやる。ロレンス神父は裏社会に通じた怪しげなクスリをつくるフイクサーだし、ロミオや従兄弟たちは、渋谷のセンター街を徘徊しているあんちゃんたちだし、超訳のことばも、マジまったく当世風・・。楠はもともとコント役者でコント作者としても活躍していて、あるときシェイクスピアに目覚め、この超訳でシェイクスピアの全作品を上演したというから凄い。この超訳の元は、小田島雄志訳と、それと坪内逍遥訳で、自己紹介は”シェイクスピア界のパンクス改め紗翁役者楠美津香です”だ。
 とにかく劇聖シェイクスピアなどという衣をとっぱらい、わかりやすく、親しみやすくという営業方針は徹底しているのだ。1時間半猛烈なスピードで、途中ギター片手の歌も入るが演じぬく。なにより観ていると、彼女がテクストを隅から隅まで熟知していることがよくわかる。ギャグの連発で一貫しているのも無理がなく、終わってこの可憐な”悲劇”のそこはかとない感銘ものこる。面白かったが、一人芝居の通例だが、演者のエネルギーが、客のエネルギーをどんどん一方的に奪っていって、客に想像の余地を狭めてゆくというきわみは、あったが・・・。

by engekibukuro | 2011-01-12 10:37 | Comments(0)  

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