2月6日(日)読書メモ


▼斉藤偕子著「十九世紀アメリカのポピュラー・シアター -国民的アイデンテイテイの形成」(論創社)。
 この本はアメリカの演劇のもならず、演劇を通してアメリカの文化、アメリカ人の根本を洗い出した見事な著述である。第一章 黒い道化芝居ーミンストレル・ショウ 第二章 メロドラマ『アンクル・トムの小屋』とトム・ショウ 第三章 家庭回帰劇『リップ・バン・ウインクル』とリップ役者 第四章 フリーク・ショウー身体の異形を技で見せる 第五章 アメリカ流シェイクスピアーファンもさまざま 第六章 ワイルド・ウエストの野外ショウ
以上が主要項目だが、膨大で貴重な資料を整理して、具体的に詳述した内容は、19世紀のアメリカの文化、アメリカ人の生活の雰囲気を彷彿させる。
 特に演者全員か顔を黒く塗って演じる「黒い道化芝居」のミンストレル・ショウと身体の異形、小人などを売り物にしたショウはアメリカ人とアメリカ文化の一種のねじれを感じさせる。奴隷解放、南北戦争の時代のアメリカでの黒人差別が色濃く残存していた時代に、アメリカ人が白人が顔を黒く塗ったにキャラクターに熱中するというのは、奇怪で、いま考えると病的だ。このショウが、フリーク・ショウとともに衰退するのは当然で、アメリカ人のアイデンテイテイは、こういう負の要素を一種の糧にしてきたこと、社会の負の要素を演劇・ショウの形で顕在化させて、それを正直に楽しみ、克服して形成してきたのだということが、この本で理解できたこと、非情に優れた論点だった。また、大掛かりな野外ショウなどの項目も、アメリカ文化形成の大きな要素だ。それらのショウが20世紀のアメリカ独特のミュージカルという洗練された文化に育ったのだろう。そしてアメリカ文化は20世紀後半の世界を席捲したのだ。この本は19世紀アメリカのポピュラー・シアターをとおしての「アメリカ論」として読める深度の深い本だった。
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by engekibukuro | 2011-02-07 08:12 | Comments(0)  

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