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3月8日(火)S「わが町」俳優座劇場プロヂュース

作:ソーントン・ワイルダー、演出:西川信廣、音楽:上田亨、俳優座劇場。
 音楽劇仕立ての「わが町」だ。西川が上田と20年も前から考えてきたことの実現の舞台。エミリーが土居裕子、ジョージが粟野史浩。土居の歌が素晴らしいし、よく出来ていた舞台だったとはおもう。が、音楽劇にするため、戯曲をカットせざるを得ないから、各幕のハイライトだけが強調される結果になる。はじめてこの芝居を観る人には、この芝居のエッセンスを伝えてとてもいいとは思ったが、この芝居を何回も観ている人間にとっては少しものたりない。アメリカの小さな点のような町・グローヴァーズ・コーナーズの、名も無い人々の毎日の変化の少ない暮らしの細部をワイルダーは愛おしく簡潔に描く。その積み重ねが、時間の重みを伝え、3幕の丘の上の墓場のシーンに繋がる。そこでの、われわれが1幕、2幕で見てきた男女の死者の姿、言動が、生と死の鮮やかなコントラストを醸成し、生と死というもののリアリテイ、そのこの上もない感触を与えられるのが、この芝居の真骨頂だと思っているから、省略が気になった。それと、原康義の進行係が、ちょっと仕切りすぎかな・・・。

▼メモ。この前の新国の「わが町」のときも書いたが、MODEの松本修演出のこの芝居の翻案。松本の故郷の北海道にした「わが町」を、この芝居を観るたびに思い出す・・。久保酎吉の進行係、エミリー役が黒木美奈子、ジョージ役が有薗芳記、この二人を梅沢昌代、得丸伸二、三田村周三、小嶋尚樹らが固めて・・・。

・ジャレド・ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄」(下)読了。一万3000年にあたる人類史が目の前に浮かんでくるような本だ。なにより、オーストラリアのアポリジニや、アメリカの原住民が、ユーラシアの白人と比べて、本質的な能力の差では無く、ただ、食料確保の難易性からきた気候・環境の差からきたものでしかないということを、自分の専門の鳥類の生態学の調査の助手のニユーギニアの原住民との交流から実証したのが説得力がある。いまさらながらとんでもなく遅れて読んだが、名著だ。

by engekibukuro | 2011-03-09 09:20 | Comments(1)  

Commented at 2011-03-10 02:51 x
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