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5月3日(火)M★「変身S★★「サブロ・フラグメンツ」

作:フランツ・カフカ、台本・演出:山元清多、作曲・芸術監督:林光、オペラシアターこんにゃく座、渋谷区文化総合センター大和田・さくらホール。昨年9月に亡くなった山元清多の追悼公演、そして今回の舞台には、山元の妻であり、自由劇場、黒テントで活躍した役者で、歌手でもある稲葉良子が客演した。1966年の初演いらい再演を重ね、2009年には念願のカフカの生誕地プラハを含むヨーロッパツアーでの高い評価で、このオペラはこんにゃく座の最大の財産こなった。今回の舞台での磐石の完成度は目を見張るようなものだった。グレゴール・ザムザは大石哲史が演じるが、場面によっては複数の歌役者が演じ、虫になってしまった足は、椅子をさかさにして顫動させたりと、今回の多層的なザムザの表現は、随所にザムザの自身についての表明を格調高く歌う大石の場面などを通して、ザムザを20世紀の悲劇の象徴としても感じさせた。パイプの家具や道具類での舞台転換、ザムザが煮詰まったときでのヴァラエテイ・ショーなどのスペクタクルへの変調など、舞台の運び方がアヂナミックで客の目をそらさせない。そしてラストの「出発」というシーン、ザムザの死んだあとの家族、カフカの没後のカフカの家族はユダヤ人絶滅を目指すナチスに捕まり、収容所に送られた。最後のこのシーンでの歌、合唱は少しでもちゃんと世界を見詰めて行動していたら、こんな凄まじい事態を惹起しなかっただろうというとり返しのつかない悔恨の歌だ。この曲が素晴らしい。初演以来、このラストの歌を聴くと思わず号泣を抑えるのに苦労するほど感動する・・・。稲葉さんが、面白い歌と芝居で客席をわかせていたのが、よかった。山元さんも泉下で喜んでいるだろう。素晴らしい追悼公演だった。
★★「勅使川原三郎ダンス」、川崎市アートセンター アルテリオ劇場。時間の見積もりを誤まって、30分ちかく遅刻、だからあれこれ言う資格はないが、勅使川原、佐藤利穂子のダンスは空間を物体にしてしまう魔力がある。その物体をかれらの身体が切り刻み、その物体の抵抗の感触が舞台に伝わってくる・・。”身体から発せられる具体的な運動と抽象性は潜むものを目にみえるようにできると思います”と勅使川原は書いているが、まさに目に見えるおうな抽象性だ。、

by engekibukuro | 2011-05-04 10:27 | Comments(0)  

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