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5月5日(木)M「思い出のブライントン・ビーチ」

作:ニール・サイモン、演出:望月純吉、文学座、全労災ホール/スペース・ゼロ。
 ニ-ル・サイモンの自伝三部作の最初の作品、二部の「ピロクシー・ブルース」、三部の「ブロードウエイ・バウンド」、この三部でトニー賞、ピュリッツアー賞を受賞した。ロシアでコサックに迫害されて、アメリカへ逃げてきたユダヤ人の一家、場所はニューヨークのブライトン。サイモンの父母と兄の一家だが、母の妹の夫が若いのに急逝してしまい、その妹と娘二人を同居させ養っている。ユダヤ人同士の助け合いで、父は本業のほかに副業をし、兄も給料は母にすべて預け、母はこの一家の切り盛りに毎日腐心している。しかし、なんとか苦しい家計の中で助け合って暮らしている一家。ヨーロッパでは、ナチスが台頭してきて、東欧にたくさんの親戚がいる一家では心配が日々増している。この芝居は、15歳のサイモンが一家の構成・動静のスポークスマン・ナレーターになって客に伝えてくれる。彼は早くも作家志望で、こう毎日、自叙伝の最初のページをつけはじめている。話題は、どこの家族でもある日常茶飯のあれこれで、食べ物の好き嫌い、隣の部屋の従姉妹の美人の姉への性の目覚めへの悩みとか、この従姉妹がダンス教室に通っていて、そこでブロードウエイ・ミュージカルのオーデイションを受けるか、高校を卒業するかという悩み、いつまでも世話になりっぱなしではいられない叔母の苦悩、ポーカーで給料をすってしまった兄の惑乱・・、そういうことどもがなんでこんなことが、と驚くほど素晴らしく劇的に語られるのだ。サイモンの劇作の真骨頂、ユージン・オニールからのアメリカ演劇の伝統、自分の家族を題材にする演劇の極めて光る秀作だ。アrストシーンは、第二次大戦が間近に迫り、ナチスのユダヤ人絶滅の危機がおとずれているとき、ポーランドの親戚が無事脱出できて、もうすぐニューヨークにこられるという便りがきたのだ、この貧しい一家にまた家族が増える、しかし世界中のユダヤ人はとにかくなんとしても生存を確保するのが至上命題だ・。その思いが伝わる感動的な幕切れ手・・。ユージン(この劇のサイモンの劇中ネーム)の宮内克也、父の大滝寛以下、文学座の俳優陣は頑張っていて、望月の演出は、すこしテンポを急ぎすぎた感はあるが、よくこの名作の真価を伝えている舞台だった。

by engekibukuro | 2011-05-06 08:17  

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