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3月27日(火)M「にわか雨、ときたま雨宿り」

作:鈴木穣、演出:西川信廣、恵比寿・エコー劇場。文化庁の新進芸術家育成事業「日本の劇」戯曲賞最優秀賞受賞作品だ。
 生涯で三度妻を替えた画家が、自宅で危篤状態に陥り、それぞれの妻の息子や娘、その連れ合いが集まった。皆、ほとんどお互い没交渉で初対面だ・・。舞台はこの画家の家の庭・・。みな父親の画家への気持ちは複雑で、最後だからと奉仕する娘もいるし、恨みつらみが一杯で、死に様をみてやろうと広言する息子もいる・・。危篤状態の決着を待つ感じになって、時間をもてあますと妙な付き合いに発展したり、隠れた本性や、夫婦の亀裂が露呈してきて、それを冷ややかに観察している若い男、画家の弟子が介入したり・・。不純異性行為に走る血縁では一番若い、三度目の画商の妻の中学生の娘がのそれの発覚で担任の教師が訪ねてきたり・・。そこらへんの人間関係の機微や、成り行き、それぞれの個性描写など、なかなか巧いし、話の運びも飽きさせない・・。役者も久しぶりに観る扉座の有馬自由(好きな役者だ・)とか、新国立劇場演劇研修所の一期生の古河耕史、古田龍太など、それに毛皮族のユニークな女優・柿丸美智恵が面白く演じていて、それなりに見応えはあるのだが、彼らの大本の父の画家がどんな人間だったのか、その存在感というか、イメージが湧くように描かれていないのと、危篤状態という一応は厳粛な状況なのに、話が妙にナマナマしすぎるという違和感が最後まで去らなかった。

by engekibukuro | 2012-03-28 08:50 | Comments(0)  

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