7月18日(水)M「しみじみ日本・乃木大将」

作:井上ひさし、演出:蜷川幸雄、こまつ座&ホリプロ公演、さいたま芸術劇場。
 明治天皇大葬の日の夕刻。大帝に殉死することを決意した乃木稀典が、静子夫人と共に、自邸の厩舎の前で3頭の愛馬に最後の別れを告げている。夫婦が去ったあと、その馬の前足と後足が独立し、人の言葉をしゃべりだす・・・、馬たちも夫妻のただならぬ気配を感じたのだ・・。さらにそれぞれの馬の前足はエリート志向、後足は下積みの庶民型と人格分裂ならぬ「馬格分裂」してしまい、乃木とのそれぞれの被乗馬体験を回想し出して、乃木の生活と生涯の傍証の役割を果たす・・、この馬と実在の明治の元勲やもろもろの人物を同じ役者が演じる・・、壽号の前足を演じる風間杜夫は乃木大将だし、吉田鋼太郎、六平直政、山崎ー、大石継太、大川ヒロキ、みなそうだ・・。乃木の西南戦争、日露戦争の有名なエピソードの表向きと裏話しの数々を、かっての軽演劇のノリで演じるのが井上の意向で、蜷川もその線で役者に思う存分やらせて舞台を弾ませる・・・。それの頂点的なのが、近所の馬車屋のメス馬英(ハナブサ)号の前足と、名将・児玉源太郎を演じる朝海ひかる、後足と元勲・山縣有朋を演じた香壽たつき、二人とも宝塚の男役出身・・。ト書きに「宝塚の男役風に」とあるそうで、この役をいままで(初演は1979年)宝塚の先輩が演じたことはなkった。これがやたらにオーバーにならず、ほどよいところに見事に決まって、舞台の華やかさがきわまった。この作品が「初期の井上喜劇を思わせる奇想の疾走に、中期の戯曲らしい成熟した批評の目が加わった作品」(パンフ・扇田昭彦)であることが明瞭に納得できて、ドタバタ劇のノリの芯にある、明治・近代国家の発祥状況の内実と栄光が、もっとも下層の馬の足のしゃべりとふるまいを中心にして、しみじみ語られる・・。ドタバタ風とちょと堅い批評性の混じり具合が・・意見のある向きもあるかもしれにないが。面白い趣向が実現した舞台だった・・。蜷川の舞台に習熟し尽くした吉田が舞台の先導役で舞台を活性化させた・・。
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by engekibukuro | 2012-07-19 08:47 | Comments(0)  

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