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1月18日(金)

▲紀伊国屋サザンシアターで「第一回紀伊国屋レーベル名画祭」で多分50年ぐらいまえに見たマックス・オフュルス監督の「歴史は女で作られる」を見る。完全復元版でなんだかナマナマしすぎるぐらい、製作は1956年。ヨーロッパ中の貴顕皇族、芸術家、無名の若者までを色香の虜にした稀代のバレリーナローラ・モンテス、その魔力は国を滅ぼすと、革命まで惹起させた。最後は、さすがのローラ・モンテスも落ち目になり、サーカスで自分の生涯をネタにするブランコ跳びの見世物になる・・、このサーカスの一切を仕切り、モンテスを見世物にした司会者が虚無の底を知り尽くしているような悪魔的な男・・、ローラ・モンテスはマテイーヌ・キャロル、司会者はピーター・ユスチノフ、若年のころの興奮まで至らぬ、ピ-ター・ユスチノフの悪魔的な魅力は、いま見ても素晴らしい。ピーター・ユスチノフは映画監督でもあり、小説も書く大才人、なによりマックス・オフュルス
が創ったサーカス場の夢魔的な映像!やはり名画だ!
▲平田オリザの初めて書いた小説「幕が上がる」(講談社)は素晴らしい。平田の才能の豊かさに改めておどろく・・。平田は演劇入門書を何冊も書いているが、この小説がいちばん演劇の魅力を純粋に伝えているね・・。ある地方の高校の演劇部が地区大会、県大会、ブロック大会、全国大会へ挑戦してゆく高校演劇部の生徒や、顧問の女優修業をしていた顧問の先生の姿を活写し、あわせて自分の進路を決めるという難題にも悩んでいる生徒たち・・。なにより演劇をつくってゆくプロセスの臨場感がさすがプロだからと思わせる緊張感にみちていて、出し物が賢治の「銀河鉄道の夜」、これは平田も劇化していてわたしも観ているから、よくわかる(?)・・。それと今は、演劇というものの社会の認知度が違うね。まあ高校演劇だからだろうが、生徒達の親や親戚まで応援してくれている雰囲気を通して日本の市民社会の成熟を小説の背後に描いてゆく・・。ひと昔前の、わたしなどの世代の、演劇の反社会性やはみ出しものが普通だった時代と随分違うのだ・・。みんなイイ子でものたりないにしても、卒業後を大部分が目指すようだから、イイ子のままではすむまいが、この小説には演劇の魅力の輝かしい原点がしっかり描かれている。傑作だ。

by engekibukuro | 2013-01-19 09:29 | Comments(0)  

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