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2月20日(水)M「ゴルゴン」(作・演出:鐘下辰男)

演劇企画集団THE・ガジラ、SPACE雑遊。

ひさしぶりに思える鐘下ステージ・ノワール。ゴルゴンとはギリシア神話の女怪、この芝居は男からみた女の不可解、恐ろしさを描く・・・、しかし、彼女たちは必死だ・・。西山水木の母親ととみやまあゆみの娘、母は昔、夫の子供を宿した浮気相手を毎日電話で追い詰めて、その浮気相手がたまりかねて夫にガソリンを賭けて焼き殺してしまった・・。終身刑で刑務所にいるが、せっぱつまって凶行におよんだ顛末を手記で発表し、母世間から疎んじられ、孤立する。唯一の助けは妹で、妹の娘は従姉妹の自分の娘のただ一人のサポーターだ・・、だが、母親の勝手な夢に翻弄された娘は徐々に絶望を深め、難関校に入学し、名のある会社に入るのだが、実は学生時代は誰とでも寝る「便器」といわれ、会社では妻子もちと出来てしまい、子供を堕し、二人目が・・、相手の妻は離婚に応じない、・・、その結果、自分の父親をガソリンで焼き殺した女と同じことをしてしまう、芝居はその娘のそこまで行く経緯を追うのだが、母の妹も浮気相手のラブホテルオーナーの息子との再婚にこぎつけて・・。一滴の救いもない、徹底した暗い話で、その徹底ぶりにおもわず失笑するしかないような芝居で、しかし、不快感なしに見応えがあるのも事実で、芝居の母と娘にまつわる周囲を巻き込む時間の舞台化の構造の緻密さ、あの素敵な西山が、これ以上ないダサイ衣服の格好で、演じてもちっとも楽しくないだろう役を演じて、ダ-クストーリーの要めになっている潔さ・・。そして、こんな世界とはまったく無縁だと思っているが、実は見て見ぬふりで自分たちの現実をやりすごしているのでははないか、とかの恐ろしさがもたげてくる気配をもたらし、また、こ芝居を表だって曰くありげに云々する誘惑も断ち切きられる、この鐘下ワールドを堪能したことになるのだった。

by engekibukuro | 2013-02-21 07:04 | Comments(0)  

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