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3月9日(土)M「長い墓標の列」(作:福田善之)

演出:宮田慶子、新国立劇場。

 この評判の高かった芝居は観ていなかったので嬉しい上演だった。いろんな知らないことや、感慨を与えられた。まず、福田善之がこの芝居のモデルになった東京大学教授河合栄治郎の家に寄宿していたとは・・、河合は戦時中に亡くなったが、河合家の長男が福田の通っていた麻布中学の先輩で、月謝の払えんなくなった福田に未亡人が援助してくれた・・。河合の本は、私の世代の前の世代の学生やインテリによく売れた・・独特のカリスマ性をもった学者だった。だが、戦前、河合のファシズム批判が、軍部を怒らせ、大学の自治権を崩壊させた事件にまつわる、学問と学者の民衆への使命感をめぐる、学校内の対立や、教授と弟子たちとの葛藤などが中心になるこの芝居は、まず、知識階級などの存在が、今の日本にはまったくなくなったこと、ましてインテリと民衆などという、一昔前にはそれで通じていた世の中では全くなくなったことが、この芝居で如実にわかる・・、あの時代は非常に特殊な時代だったのだ・・。だから、おそろしく登場人物たちの言動が古めかしく感じられる。
しかし、現在80歳を超えた福田が、この戯曲を27歳で書いたというのは、驚異的なことだ。しかし、3時間にわたるこの芝居の、権力や時代の不正義に立ち向かってゆく姿勢や、使命感や、それをめぐる葛藤や苦悩は、それ自体としては、それを担う人間が誰であろうと、いつの時代にも存在しているし、逃れられない・・。そういう奥の深い普遍的なテーマに、この芝居が立派に触れていることが、この芝居を今日に生きている証拠だろう。また、主人公山名を演じた村田雄浩、夫人の那須佐代子、教授の小田豊、石田圭祐い以外の役は、この芝居の副主人公の助教授城崎を演じた古川耕史以下8人は、全員新国立劇場の研修所の卒業生で、なじみにくい難しい役をみな懸命に演じていたのも大きく印象にのこった。
▲おもろ。カップル、中川君、中川君とタフテイのフルサイズをハーフサイズにして食べあった。

by engekibukuro | 2013-03-10 09:40 | Comments(0)  

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