人気ブログランキング | 話題のタグを見る

4月4日(木)S「パパのデモクラシー」座・高円寺

ー東京ヴォードヴィルショー創立40周年記念興行第3弾ー
作:永井愛、演出:鈴木裕美。
・この作品の初演は永井の劇団二兎社によって1955年に、ベニサンピットで上演された。二兎社の兎の永井の相棒大石静と1991年に分かれてから5本目の芝居か・・。大石との二兎の時代は、お互いに書き、演出し、演じあってきた・・。そして、この「パパのデモクラシー」が、社会や歴史への目配りがきちっとした質の高いエンターテイメントでもある舞台を創りだす永井の作風の出発点の芝居だった。終戦直後の東京のある町の神社が舞台。占領軍によって国家神道が禁止され、神社がなりたたくなってもう神主一家は食うや食わずでタイヘン、その上、知り合いの元特高警察の刑事が転がり込んできて、さらに焼け残って空いている部屋があるというので、焼け出された人たちがおしかけてきて勝手に住み出す・・、そして占領軍の民主化政策と新憲法で、にわか民主主義、にわか左翼が続出、この神社に住み込んだ人間たちも、中に折からの東宝撮影所の労働争議の渦中にいる映画人たちがいて、デモにゆき、インターナショナルを歌い、神社は毎日てんやわんやで・・。芝居は得たいのしれない男や女が終戦後の神社で、右往左往する様を描き出すのだが、今回の舞台では、いろんな人間たちの話が空転ぎみで、勢いはあるがなにがなにやらわからないところもあるが、それでも永井が終戦直後の日本人の混乱振りを適格に描写、その混乱が食うや食わずの時代なのに、なにか明るい、古い日本から解放された気分もある様子を独特の喜劇タッチで描きぬいた芝居であり、有名な2.1ゼネストがマッカーサーの命令で禁止され、伊井弥四郎委員長の声涙ともにくだる断念報告のラジオ放送で終わる芝居が、その後の日本の行く末を暗示した作品だと、改めて感心したのだった。
また、今回は佐藤B作が演じた、捨て子だったのを神主が養子にした男を、初演では青年座の山本龍二が演じて、その際立った独特さで山本の出世作ともいうべきものだったことも思い出した。

by engekibukuro | 2013-04-05 10:10 | Comments(0)  

<< 4月5日(金)S「木の上の軍隊... 4月3日(水) >>