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4月5日(金)S「木の上の軍隊」こまつ座&ホリプロ公演

原案:井上ひさし、作:蓬莱竜太、演出:栗山民也、シアターコクーン。
 井上ひさしの宿願だった沖縄についての芝居を、蓬莱が受け継いで書いた芝居だ・・。よくそんな大役を引き受け、たいへんなプレッシャーに堪えて、書き上げたものだと、まず感服した。舞台一杯にガジュマルの木(美術:松井るみ)、その木の上に追い詰められた二人の兵士、新兵の藤原竜也、上官の山西惇、それに木の下には片平なぎさのガジュマルの木の精背、彼女は語り手だ・・、そして舞台上手にはヴィオラ演奏の絵b徳高真奈美・・。木の下には戦友の死体がころがり、アメリカ軍の銃撃は頻繁で、もっていた食料は日に日に乏しくなり、上官と新兵の階級差の軋轢も歪んでくる、新兵は島の人間で、上官は本土(ヤマト)の人間だ・・。ヤマトのウチナンチューへの差別の兆しが見えてきて・・、食料がほとんど絶えていたころ、アメリカ軍の野営地の残飯が木の下に捨てられて、肉やらなんやらうまいもので、それで食い物の心配がなくなったが、上官は敵軍の食い物を食うのを最初はやせ我慢で拒むが・・。上官は毎日野営地を双眼鏡で監視していたが、野営地はだんだん大きくなり基地になってゆく・・。二人の会話と、二人の状態を語り手が語る構造は、かなりきついもので、ウエルメイドの名手の蓬莱も芝居の展開もシリアスなものになってゆき、二人の会話が、日本のの軍部がいかに沖縄を使い捨ての具にしただけだという差別の構造が、上官の言動から鮮明になってきて、それが現在の本土・日本政府と沖縄の関係の現状と重なってくる・・。そして追い詰められた上官は最後に、この戦争はまったく不毛な無意味な戦争であることを、オレは最初から知っていたと絶叫する・・。二人が、戦争が終わったのを知ったのは、敗戦後2年のちだった。二人は、新兵は島へ、上官は本土へ帰るが、そののち二人は会っていない・・。この二人の会話だけのかなりきつい芝居を、藤原と山西がガジュマルの木のセットの上り下りという難条件をも克服して果敢に演じぬいた、その熱気と持続力は感嘆に値する。泉下の井上も熱い拍手をを送るだろう・・。
▲「悲劇喜劇」5月号を読む。特集は”続・演出ノート”、森新太郎、小川絵梨子、多田淳之介、中野成樹、谷賢一、仲屋敷法仁、上村聡史と若手の演出家たちだが、それぞれ、充実した読ませる文章だが、当然なのかも知れないが、この演出家たちの共通項とか、共通の気分というようなものがないのが、とても印象に残ったしタメにもなった。新国立劇場で上演している「効率学のススメ」の演出家ジョン・E・マグラーへの今村編集長のインタビューは、これから観る芝居だから役にたつ・・。それと、グッドタイミングの上記「木の上の軍隊」の蓬莱竜太への編集長のインタビューも載っている。蓬莱の苦心の過程が如実に分るインタビューだ・・・。

by engekibukuro | 2013-04-06 09:59 | Comments(0)  

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