人気ブログランキング |

9月16日(月)

▲フイリップ・K・デイック「市(まち)に虎声(こせい)あらん」(阿部重夫訳)平凡社を読んだ。映画「ブレードランナー」の原作者デイックの25歳のとき書いた長編処女作。特異なSF作家として沢山のファンを持つ作家だが、SF界への短編デビューと同時で、この小説はデイックが自らSFと区別した普通小説の処女作だ。この小説は、書かれてから55年たった2007年にやっと出版された。デイックは1982年に急逝している。
”妄想の繭から綺想の蝶を羽ばたかせる”作家デイックのこの小説は”異常なまでの外見偏重とその裏返しの内面のゆがみ、肥大化した自我のケダモノと化した青年の破滅と現実への帰還を描く「カフカ的パルプ・フイクション」”実はデイックを読むのは初めてなのだ・・。80年代の小劇場の時代では、たとえば「ブリキの自発団」の生田萬などデイック的発想の芝居を書いた熱狂的デイックファンがいて、一種の必読文献dったがなんとなく敬遠していた・・。たまたあこの本が手に入って読んだのだが、膨大綿密な訳注がついた500ページ強の小説はちょっと躊躇したが、書評家として信頼している山形浩生氏(コアのデイックファンだったんだ)が”激賞”しているので読んでみたら、この主人公25歳のスチュアート・ハドリーの行状、魂のさすらいにどんどん魅入られてゆき一体化してゆき終末まで漕ぎつけた・・、だが、訳注はすっ飛ばして読んだ全くのランボー読みで、理解の度合いは怪しいもの・・、そしてこの訳書の最大の特徴は凝りに凝った日本語の訳文、筒井康隆の「聖痕」を思い出したが、題名の”・・”虎声”という言葉など地所に出ていないし、”佼童”はワカモノと、”喪気る”をショゲルと読ませる。あとはパソコンでは変換不可能な難字、旧字、しらない古語満載で、それが意味が不明でもこの小説の特異な魅力の源泉になっているのも事実・・。それと50年代のマッカーシイー旋風下の吹き荒れるアメリカの荒廃の空気、舞台のサンフランシスコの綿密な情景、風景描写の素晴らしさ、これは映画ブレイドランナーを思い出した・・。さらにこの時代が、tレビなど家電製品の販売合戦の最盛期で、主人公も販売店の店長だし、今の日本とそっくり・・。巻末の訳者の解説も役だつ、デイックのこの小説を描いた時代のサンフランシスコのゲーリー・スナイダー、ケルアック、ギンズバーグなどビートジェネレーションとの交流などの紹介、デイックの思想の底にある東洋思想、老子や道元など、それにスピノザ、このへんになるちと私には輪たあ高級すぎてムリだが、訳者のなみなみならぬデイックへの傾倒ぶりに圧倒された・・。

by engekibukuro | 2013-09-17 09:09 | Comments(0)  

<< 9月17日(火)M「「Hedd... 9月14日(土)「hedge」... >>