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11月23日(土)S★「地を渡る舟」M★★「モモノパノラマ」

★作:長田育恵、演出:扇田拓也、てがみ座、東京芸術劇場ウエスト
ー1945/アチック・ミュージアムと記述者たちー。富豪渋沢栄一の息子日本銀行総裁まで上り詰めた銀行家渋沢敬三が開設した民俗学のミュージアム、渋沢の財力と庇護のもと、民俗学の学徒が、日本各地の民具や言葉を取集し、研究し、日本人の暮らしの根元を探る研究をする。その中で、際だった行動力と記述の才能を渋沢が認めた大阪の小学校教師だった宮本常一を主人公にした劇・・。さらにこのミュージアムの研究者、渋沢邸の一区画をしめるミュージアムの研究者の世話をする女中たち、それらの人々の群像劇でもある。長田の世間にはあまり知られていない特殊な活動、それに従事する人間たちへ光を当てる関心と眼差し・・・。よく調べ、取材して万全を期すのは師匠井上ひさし譲りだろ・・、渋沢、宮本から女中たちまで実に昭和の戦争に突き進んでいた時代の人間を生き生きと彷彿させた長田の戯曲、扇田の演出、演じた役者の力とアンサンブルは瞠目に値する・・・。そして国家が民衆の日々の暮らしを蹂躙して戦争に追い立ててゆく趨勢に苦悩する研究者たち、生まれ育ち暮らしてきた郷土から、国家のために戦地にゆかされ戦死して、東京の靖国神社に行ったこともない死者を英霊として祭り上げる軍人に拳銃を向けられながら抗議する宮本、この戦慄させるシーンは、、現在の国家が民衆を支配する度が昂進している現状を喚起させ、非常にアクチュアルな舞台になった。長田の底力の増幅をまざまざと示した秀作だ・・・・・。
★★作・演出:藤田貴大、マームとジプシ、神奈川芸術劇場KAAT
 どこか遠い地方の町、そこで暮らす若者男女、誰かの家でたくさん生まれた中で一匹だけ残された猫モモ、この猫をめぐってその町のごくありきたりの出来事、姉妹の猛烈な喧嘩など、それらのテンコ盛りが、組立自在の木の柵、自転車、梯子を縦横無尽に使いこなした遊戯のような、いや遊戯そのもの言葉の体のパフォーマンス・・、ことばの音、体の力感、それらの喧噪jが舞台を覆いつくす、若者たちの一時期の意味が追いつかない猛烈な日々の体験、ただ生きてしんゆくモモを置いて、若者は町をでてゆく・・。そのなかに演劇をやっている若者がいる、藤田の自伝劇でもあるらしいこの舞台は、藤田の才能の豊かさを十二分に感じさせた作品だった・・。

by engekibukuro | 2013-11-24 07:32 | Comments(0)  

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