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4月2日(水)

▲「新潮」4月号の連載エッセイ、長谷川郁夫「吉田健一」を読む。長谷川は元小澤書店社主、吉田健一は宰相吉田茂の息子で、現在の麻生財務大臣の伯父だ。ケンブリッジ大学出の英文学者、文芸評論家、小説家でもある。今月は、吉田が同人だった丸善が版元の高級文学雑誌「聲」の話、この雑誌の同人は吉田のほか、大岡昇平、三島由紀夫、福田恒存、中村光夫、吉川逸治。この季刊誌「聲」は装丁も内容もハイブローで若僧には観賞・理解はおぼつかなかったのだが、毎号買った。とにかく吉田の愛読者だった、とくに吉田の詩の訳詩が素晴らしいものだった。谷川俊太郎は吉田の訳詩を日本語の詩として絶賛している。私が愛読している吉田訳「シェイクスピア詩集」から、十四行詩、第十八番
  君を夏の一日に喩えようか。/君は更に美しくて、更に優しい。
  心ない風は五月の蕾を散らし、/又、夏の期限が餘りにも短いのを何とすればいいのか。
  太陽の熱気は時のは堪へ難くて、/その黄金の面を遮る雲もある。
  そしてどんなに美しいものもいつも美しくはなくて、/偶然の出来事や自然の変化に傷けられる。
  併し君の夏が過ぎることはなくて、/君の美しさが褪せることもない。
  この数行によって君は永遠に生きて、/死はその暗い世界を君がさ迷ってゐると得意げに言ふことは出   ない。
  人間が地上にあって盲にならない間、/この数行は読まれて、君に生命を與へる。


 

by engekibukuro | 2014-04-03 07:34 | Comments(1)  

Commented at 2014-04-04 00:09 x
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