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5月8日(木)



▲岩波ホールで90歳に近いアンジェイ・ワイダの新作「ワレサ」を見た。ワイダの作品は、この岩波ホールで封切られることが多く、活気を呈していたものだが、ガラガラだった。それでも作品は、いかにもワイダらしい寸部も衰えを感じさせない見応えたっぷりの映画だった。一介のグタンスグ・レーニン造船所の電気工だったワレサがついにはポーランド大統領まで上り詰めた困難にみちた、ときには死を覚悟する危機を乗り越えてきた・・。この映画はワレサのたぐいまれな政治的資質、状況を察知する能力というより正確な直観、この直観をすぐ実行する決断力、敵を知り己を知る冷静さ、権力も強圧を躊躇するカリスマ性、ワレサはインタビューで、”私は本なんか5ページも読めない、インテリはそばにいてもらうが、それほど尊敬しない、彼らは時間がかかるだけだ・・”と言い放つ・・。そして何よりワレサを支えたのが妻のダスタ、6人の子供を育て、組合活動で首になったワレサを助けてほとんど愚痴などこぼさずに支援に凛としている・・。ワレサがノーベル平和賞を受賞したとき、いったん受賞式のため国外の出ると帰国できないワレサの代わりに授賞式に出席してスピーチをする・・。これは、たぐいまれな夫婦愛の映画でもあるのだ・・。困難に対処する能力とはなにか・・、ワレサのザックバランでユーモアたっぷりの人間像を演じたロベルト・ヴィエンツキュヴイッチが素晴らしい・・。そしてなにより、全編に流れる80年代のロックミュージカルが素晴らしい・・。この音楽、その時々刻々の出来事をシニカルでもある愛をこめて歌うバラードがこの映画の基調トーンをなし、ワレサの生涯と東欧の革命的な変革を感じ尽させた・・。ワレサは今年広島、長崎を訪問するためにに来日した・・。

by engekibukuro | 2014-05-09 08:12 | Comments(0)  

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