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6月3日(火)

▲平山周吉『昭和天皇「よもの海」の謎』(新潮選書)
 ”昭和十六年(1941)九月六日、帝国日本の首脳陣が宮中に集まって、御前会議が開かれた。昭和天皇はその日、列席者の前で、明治天皇の御製を読みあげた。
 ・よもの海みなはらからと思う世になど波風のたちさわぐらむ
昭和天皇はさらに、この和歌に込められた明治天皇の「平和愛好の御精神」を臣下たちに説いた。アメリカとの戦争が刻々と迫りくる時にあって、この日は、昭和天皇が戦争への流れに「待った」をかけ、「平和」にもっとも近づいた日であた。それにもかかわらず、わずか三か月後の十二月八日に日米戦争は始まった。戦争に向かってゆくて行く歴史の巨大なうねりは、「上御一人(かみごいちにん)」である昭和天皇が、明治天皇の絶対的権威をかろても、止められなかったのか。”この御製の和歌をめぐって、この和歌を手がかりに著者は昭和の歴史の謎、ひいては近代日本の謎そのもの、天皇制の摩訶不思議を多大な資料を読み、迫ってゆくが、決してあきらかにならなくて、それが戦後の今上天皇の時代にまた変化してゆく・・。ほとんど手におえない歴史のリアリテイに肉薄したといえる本だと思う。
▲「群像」6月号、群像新人文学賞受賞作品、横山悠太「吾輩ハ猫ニナル」を読む。日本人の父と、中国人の母とのハーフが主人公、むろん漱石の名作を踏まえての作品だが、明治の漢語のかわりに現代中国語の漢字を(作者は中国滞在が長いらしい)多用しているので、一目ではわかりにくいし、構成もややこしくて年寄りのは読むのがタイヘン!原作も読んだのが大昔だし・・。

by engekibukuro | 2014-06-04 09:02 | Comments(0)  

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