人気ブログランキング | 話題のタグを見る

6月11日(水)S「十九歳のジェイコブ」新国立劇場

原作:中上健次、脚本:松井周、演出:松本雄吉、音楽監修:菊池製成孔
 
 松井・松本という異色の組み合わせ、松本主宰の維新派での中上原作の路地の物語を大阪の南岸の大がかりの仮設舞台で観たことがあるが、この舞台は松井の彼独特のコンセプトを貫徹したなかなかの野心作だった・・。紀州の路地から東京へ出てきた中上自身の体験に根差した物語で、ジャズ喫茶に入り浸り、クスリに溺れ、荒れたセックスを際限なく繰り返す若い男女の落ちこぼれの群像・・。松井はこの舞台を直接的な物語にせず、特定の状況のコンセプトをバックの大小の映像文字で表示し、時としてそれがギリシゃ劇への言及へ拡大する・・。圧倒的なのは菊池監修の音楽、むろんアイラーなどのモダンジャッズが主体だが、それにヘンデルのオラトリオも鳴り響く、だからジェイコブを演じる石田卓也ら演技陣は、そういう全体の舞台構成の一要素で、客体化を承認した主体というべきか、松井、松本の作品への独特の参加スタイルだった・・。だが、芝居の像が最終的にどこで結ぶのか、そのへんが多少不分明だが、これは西洋絵画の一概念アナモルフォーゼ(歪像画)で考えると、ー正面から見てもその画は正しく像を結ばず、なにが描かれているのか読み取れない。しかし、画家が定めた特定の視点から画を観たとき、その瞬間だけ正常な像が浮かび上がってくる。ーそういう瞬間を見逃したのかな・・。しかし、山下洋輔門下の菊池は、山下が昔、唐十郎の紅テントでフリージャズを演奏したりした流儀で、この舞台をとびきり活性化させたこと、それが最大の魅力の舞台だった。

by engekibukuro | 2014-06-12 08:01 | Comments(0)  

<< 6月12日(木)M「請願」加藤... 6月9日(月)★M「三人吉三」... >>