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7月14日(月)S「母に欲す」パルコ劇場

作・演出:三浦大輔、音楽:大友良英
 お母さん、おかげで、僕はこんなに大きくなりました。/お母さん、それなのに、僕はこんなに大きくなりました。ー今度はあなたに聞きたいことがあります。/僕は ちゃんとあなたの「子供」だったでしょうか?-産んでもらい・・育ってもらい・・見守ってもらい・・我慢してもらい・・許してもらい・・突き放してもらい・・-そんな僕を誇らしげに、自分の「息子」だと胸をはって、言ってくれました。ー母に欲して・・欲して・・/何かを考えるとかじゃなく・・/欲して・・欲して/何もかも求めることができたのか・・/ちゃんと欲して・・僕は、生きていきます。(以下略):「母に欲す」作詞:三浦大輔、作曲:峯田和伸 大友良英、歌:峯田和伸
 如上のような三浦の母親に対するアンビバレンツな激情がみなぎっている新作だ。3時間の大作だが、三浦の芝居の変貌におどろく・・。神経を逆なでするようなエキセントリックな激しさで客をとりこにして、舞台を凝視させた作風が今回は、その人物たちや言動に三浦テイストは、今回出ている三浦の芝居の常連、米村亮太朗、古澤裕介の演技で味あえるが、新しい峯田和伸、池松壮亮、土村芳、それに片岡礼子、田口トモロヲというメンバーが新しいテイストを醸し出す・・。母に死なれた峯田、池松の兄弟が、父(田口)がス十九日があけるとすぐに義母になるという女性(片岡)を家に入れる・・。兄弟が実母と義母にたいする愛と憎しみの間で揺れ続け、性的なさざなみをもかいくぐるプロセスがこの芝居の骨子だが、パンフでの高橋源一郎との対談で、三浦は自分はマザコンだといういっていることを実証する母への慕情が真正面から描かれた芝居だった。
▲石牟礼道子「葭の渚ー石牟礼道子自伝」(藤原書店)。なんという豊かな言葉の世界だろう。この言葉によって水俣の生まれ育った石工の家の家族、海や街の風物や風景が眼前に蘇ってくる。家に一冊も文学書などない環境に育って、徐々に短歌、詩を書き始め、戦後きっての詩人谷川雁と知り合い、言葉と文学による世界への旅に出立、折からの水俣病の渦中に遭遇し、ともに公害廃絶の運動に同伴して、ついに名著「苦界浄土」を書き上げる・・。それまでのプロセスが書かれた本だが、言葉と文学への信頼が深まった本だった。

by engekibukuro | 2014-07-15 07:53 | Comments(0)  

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