人気ブログランキング | 話題のタグを見る

8月6日(水)

全くのおくればせだが、いとうせいこうの小説「想像ラジオ」を読んだ。いとうせいこうは演劇ではケラが演出した、大倉孝二の一人芝居「ゴドーは待たれながら」で感心したが、小説ははじめてで、こんなすば素晴らしい小説を書くひとは・・、不明にしてしらなかった・・。3・11の大災害で、津波にのまれて死んだのだが、死者として高い杉の木のテッペンで想像上のラジオ放送を開始しして、災害で死んだ近親者はじめ様々な人々、生者を交えたリスナーからのメールを紹介してゆく・・、目を瞠るような独創的な小説だ・・。
”・「死者と共にこの国を作り直して行くしかないのに、まるで何もなかったように事態にフタをしていく僕らはなんなんだ、この国はどうなっなちゃたんだ」 「そうだね」 「木村宙太が言っていた東京大空襲の時も、ガメさんが話していた広島への原爆投下の時も、長崎の時も、他の数多くの災害の折も、僕らは」死者と手を携えて前に進んできたんじゃないだろうか?しかし、いつからこの国は死者をあ抱きしめていることが出来なくなった。それはなぜか?」 「なぜか?」 「声を聴かなくなったんだと思う」 「・・・」 「亡くなった人はこの世にいない。すぐに忘れて自分の人生を生きるべきだ。まったくそうだ。いつまでもとらわれていたら生き残った人の時間も奪われてしまう。でも、本当にそれだけが正しい道だろうか。亡くなった人の声に時間をかけて意味を傾けて悲しんで悼んで、同時に少しずつ前に歩くんじゃないのか、死者と共に」 「たとえ聴こえなくても?」 「ああ、開き直るよ、聴こえなくてもだ」・・・。”
・ 類いまれな鎮魂の書だ・・。

by engekibukuro | 2014-08-07 08:52 | Comments(0)  

<< 8月7日(木)S「朝日のような... 8月5日(火)S「タイタス・ア... >>