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9月24日(水)「語る兜太ーわが俳句人生」(金子兜太)


 黒田杏子ー聞き手(岩波書店)

 ★水脈の果て炎天の墓標を置きて去る★

 この句は、太平洋戦争のいてトラック島で海軍主計将校として参戦した兜太は、補給が絶たれ、アメリカ軍の襲撃が猛威の下で、餓死者続出の地獄の島から、米軍の捕虜になり、ついに帰還する際の戦場からの島をおおう墓標を悼んだ絶唱ともいうべき句だ・・。
 この本は現在94歳の兜太の、全生涯を総括したというべき本だ。帰還後、日本銀行に復職し、学歴絶対の日銀で、東大にも関わらず組合運動に専念して出世の道を断たれ、それがかえって俳句への道を用意して、無季俳句の前衛俳句の雄として認められ、ついには「朝日俳壇」の撰者として、俳句界の大御所になるまでの、山国秩父の俳人でもあった医者の長男として生まれた兜太の波乱万丈の生涯の聞き書きだ。なにしろ94歳で現在も矍鑠として、毎週金曜日の朝日俳壇の選考日を楽しみに、熊谷の自宅から息子さんと東京へ出てくるのを楽しみに元気で活躍している。母堂は106歳で大往生なさったそうだ。兜太を10代で産んだ。大家族の中で苦闘を重ねた美貌の母だったそうで、夫が俳句にうつつを抜かすのが大迷惑で、兜太には絶対俳句などすうなといっていたそうだ。兜太は女性は10代で子供を産んだ方がいいと勧めている!故小沢昭一、永六輔、矢野誠一、入船亭扇橋などの「東京やなぎ句会」との交流の楽しさを語り、特に小沢昭一(俳号:変哲)との交友を貴重なものと語っている。あと10年は生きるそうだ・・。最後に私の偏愛する句を挙げる。

 ★霧の村石を投(ほう)らば父母散らん★

by engekibukuro | 2014-09-25 08:57 | Comments(0)  

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