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10月12日(日)★M「変身」★★S「光のない。」KAAT

★ーアンドロイド版ー、<青年団+大阪大学ロボット演劇プロジェクト>
原作:フランツ・カフカ、作・演出:平田オリザ、アンドロイド開発:石黒浩(大阪大学)
 舞台に中央にベッド、「変身」の主人公グレゴワール・ザムザを演じるアンドロイドが頭を立てて寝ている。アンドロイドの吹き替えの声はフランス語だ。このロボット演劇はザムザの父、母、妹をフランス人の俳優が演じる。したがって字幕が出る。字幕の表示スペースはベッドの真上、字幕を見ながら真下のアンドロイドの細かい微妙な動きを観るのはかなりの注意力がいる・・。原作ではザムザはある朝、突然虫に変身するのだが、この芝居はある朝、突然アンドロイドに変身するのだ。平田は「変身」の「人間は、ある朝、虫になる可能性がある。それほど人間を人間たらしめている根拠はなにもない」というこの作品のテーマといわれているものを、”ロボットに関われば関わるほど、ロボトと人間を明確に分ける区分はないと感じるようになった”ということに敷衍した。虫になって部屋をはいずりまわるザムザ、ベッドに寝たっきりのアンドロイドのザムザ、この懸隔そのものがとても興味深いものだった。
★★作:エルフリーデ・イエリネク、翻訳:林立騎、演出:三浦基、音楽監督:三輪真弘、美術:木津潤平、地点。
 この作品は2012年のF/T12で初演された。素晴らしい舞台だった。その年のわたしのベストワンだった。
この作品は、イエリネクが日本の東日本の大震災と福島の原発事故に触発されて書いた作品だ・・。しかし、このテキストは戯曲というより”発語を前提にした散文詩”であり、さらに震災や原発事故に直接言及する言葉はわずかで、通常の演劇の言葉の理解の域を超えている。事態の根源を見据えようという力がみなぎる断章の連鎖だ・・。この舞台化するのが困難なテキストを三浦は、テキストの言語を三浦は主宰するユニット地点の地点語という特有の発語のスタイルに変換し、安倍聡子以下の5人の俳優、音楽の三輪、美術の木津とともに見事に舞台化を果たしたのだ。舞台前面には土豪が横断し、その土豪に横列して死者の足だけがにょきにょき出ていて、この足は2時間でっぱなしだ。音楽、美術のそれぞれの達成も見事なのだが、この舞台を完成させたの俳優たち、とくに中心の安部聡子のボイスパフォーマンスだ。この女優はどんな奇矯ないいまわし、声、絶叫でもそれが少しも違和感を感じさせない高度な表現になる・・。今回の再演はどんな細部もひとつひとつユニークな表現を伴い完成度が高い。そしてその結果、とてもヘビーだ。観るのも力がいるこのような舞台を創れるのはいま三浦しかいない。舞台芸術という言葉が純粋に使える舞台なのだ。
・三浦も安部も青年団の有力メンバーだった。KAATで昼は平田オリザの、夜は三浦、安部の芝居。ちょっとないめぐりあわせ・・・。
・ロイヤルス、敵地のグラウンドで2連勝!

by engekibukuro | 2014-10-13 08:13 | Comments(0)  

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