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10月22日(水)M「山崎方代の歌物語」劇団黒テント

演出・台本:坂口瑞穂、台本協力:内沢雅彦・服部吉次、音楽:古賀義弥、タイニーアリス
 山元清多、斉藤晴彦の黒テントを支えてきた人が亡くなり、牛込の常設劇場もなくした黒テントが、2年9カ月ぶりの本公演ができて、劇団創立以来のファンにとっては嬉しいかぎりで、舞台も期待に違わぬものだった。山崎放代は俳句でいえば、山頭火や尾崎放哉のような短歌の奇人で知られている。この方代の生涯を黒テントならではの”歌物語”に仕立てた・・・。ファンにとっては、開幕して、服部吉次がクラリネットを吹き、古賀作曲の唄を全員で歌うシーンだけでも、もう黒テントの舞台にすっぽり参入している愉悦を感じるのだ。
 山梨の農家に生まれ、両親の農作業を手伝いながら短歌に没頭し、昭和16年に兵隊にとられ、チモール島の戦闘で右眼を失明、左眼も視力が乏しくなる。戦後も靴直しなど職を転々とするが、しだいに方代の放浪短歌のファンがふえてくる・・。田沢拓也著「無用の達人 山崎方代」を基にした台本だが、方代を<白い背広の放代><軍服の放代><青エプロンの放代><ギターと病院の方代>とそれぞれの時代の方代を描き分け、その時々での方代と交流があった女性とのエピソードがつづられてゆく・・。この方代の生涯を歌物語で展開してゆく方法そのものが、黒テントの伝統スタイルだし、そのスタイルがもっているテイストが、創立いらいのメンバーの服部や桐谷夏子と、今年入団したばかりの新人との一致したアンサンブルできちんと維持されていて、アンサンブルの魅力も黒テントならではのものだった。方代の短歌を四首を・・。
   ・人間はかくのごとくにかなしくてあとふりむけば物落ちている
   ・汚れたるヴィヨンの詩集をふところに夜の放浪の群れに入りゆく
   ・ふるさとを捜しているとトンネルの穴の向こうにちゃんとあり
   ・茶碗の底に梅干しの種二つ並びおるああこれが愛なのだ

by engekibukuro | 2014-10-23 08:29 | Comments(1)  

Commented at 2014-10-23 23:21 x
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