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12月3日(水)M「汽水域」シアタートラム

作:長田育恵、演出:扇田拓也、演劇ユニット てがみ座

 近年、長田の戯曲への評価が高まり、今年の夏には文学座のアトリエ公演のために「終の楽園」を書き、てがみ座の扇田との協同も安定して、上昇の一途だ・・。
 今回はさらなる一歩へのスタート公演、力のみなぎっている舞台だった。鰻の稚魚の発生の海を追って、長田はフィリッピンへ・・。だが、この稚魚、近年収穫高が落ち込み、稚魚の価格が高騰し、産地の海での稚魚の奪いあいが激しく、このフィリッピンの小島でも、怪しげなブローカーが暗躍して漁民を操っている。この島は開発事業で整理され、島民は移住を迫られている。この島に住む日系二世の男は、この移住に断固反対している。この芝居は、このフィリッピンの日系二世の家族の話しが中心だ。この一家の長男が父親の反対を押しきって日本に出稼ぎにゆく・・。この長男は、横浜の寿町のスラム街に住む・・。フイリッピンの小島と寿町とを交互に見せてゆく・・。長田はフイリピインへの日本の侵略、虐殺の過去をこの日系二世の男の影として染めて、日本とフイリッピンの関係、その現在を長男の出稼ぎを含めて、歴史の深層を浮上させた。ただ、現在のアクチュアルな社会劇の面と、家族劇の面との統一感がいまひとつ・・。しかし、出稼ぎの長男と島に残った弟の兄弟愛、島人とたちの交流など胸に迫るシーンを、扇田がきちんと見せて、この作品の芯を開示した。この作品に賭ける、長田の心情は充分伝わっているが、今回、それが主情的というか、文学的にすぎるきらいがあったのも事実で、長田の師井上ひさしのように、芝居としての割り切り方も必要だとも感じた。、

by engekibukuro | 2014-12-04 07:20 | Comments(0)  

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