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2月1日(日)矢野誠一「小幡欣治の歳月」(早川書房)

 この本は、雑誌「悲劇喜劇」に2011年5月号から2014年3月号まで35回連載されたもの・・。
雑誌で毎号楽しみにして読んでいたが。改めて読み、つくづく感心し、感銘を受け、さまざまな感慨にふけるのだったl・・。小幡は新劇の群小劇団といわれた炎座という劇団から出発したが、五味川純平の「人間の条件」の脚色で注目を浴び、商業演劇の雄菊田一夫に才能を評価され商業演劇の随一の書き手になった。この本は83歳で死んだ小幡の七つ年下の矢野の53年にわたる小幡との交友をつづった本だ・・。私は新劇育ちで商業演劇をほとんど蔑視する世界だったから、小幡のl作品は、名高い「三婆」も観ていないくて、後年小幡が新劇に回帰して劇団民藝に書いた芝居しか観ていない・・・。この本を読んで、自分の偏狭な演劇体験を思い、それに芝居の世界にまつわる、この本で書かれた酒や競馬を含めての快楽の世界に羨望し、なにより著者のそれらを書く、文章の巧さ豊かさに心底魅入られた・・。プロの物書きの凄さ・・。多少の共通の知り合いがいるのもl嬉しかったし、他に書きたいことはたくさんあるが、わたしにも共通する以下の文章を書きうつしてひとまずとする。
”小幡欣治の死にあたって、私は涙をこぼしていない。小幡欣治ばかりでない、これまで肉親をふくめて何人もとの別れに出会ってきたのに、そのことで涙を流した経験が私にはない。子供の頃から泣き虫で、いまでも芝居や映画、ときにはテtレビや読書の最中、おもわづ涙ぐむのがしょっちゅうなのに、人の死で泣いたことがない、というより泣けないのは自分が少しく無情な人間に思われてきて、ちょっと困った・”

by engekibukuro | 2015-02-02 11:36 | Comments(0)  

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