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2月15日(日)


 ★矢野誠一「劇場経由酒場行き」(幻戯書房)
 芝居、酒、劇場、芝居にかかわるあらゆるジャンルに関わる人たちにつての、1935年生まれの著者の集大成のようなエッセーだ、演劇や著者専門の落語などの芸能を、さらに60年安保での活動をふくめて、昭和の生き証人、昭和への挽歌であるこを深々と感じさせる本だ・・。
 エピソード満載で紹介したいこといどもはやまほどあるが、終章に近いところでの交遊録として87歳で亡くなった大滝秀治の話を書いておこう・・。
 ”大滝秀治は小学校五年生のとき、右耳の中耳炎を患い、切開手術したため右耳は完全失聴している。29歳で吐血、左肺摘出で左耳も難聴となり、三十七歳から五十年間腰痛のためコルセットなしには歩行も不可だったという”・・・満身創痍の身でつとめあげた舞台に、六十年も向き合って、「ああだ、こうだ」と口はばったいこtとを言いつづけてきたのだから、批評する立場ならずとも、観客とはずいぶんと残酷な存在だと、あらためてしらされた思いをしている”
 著者と大滝のつきあいは、劇団民藝の吉永仁郎作「すててこてこてこ」で三遊亭円朝を演じたときの相談相手になったときからだそうで、あるときパイロットの創業六十五年を記念した限定品の3万8千円の万年筆を贈られて、大滝が著者以外に贈った人が、「黒澤明、倉本聡、奈良岡朋子だそうで、著者は「私にはこれ、殺し文句だった」そうだ・・。

by engekibukuro | 2015-02-16 08:14 | Comments(0)  

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