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2月22日(日)C・イーストウッド「アメリカン・スナイパー」


 イーストウッドはすごい、戦争の現実を容赦なく描き、戦場の現場にいるかのような臨場感がこれは映画を越えたそのもののような伝達だ・・。海兵隊を擁護する狙撃部隊の狙撃兵クリスは、”弱い羊を守る牧羊犬のなれ”と父にいわれ育ったテキサス生まれのクリフは、イラクで子供を含む160人を射殺して”伝説の射撃手といわれようになる・・。だが国には恋女房と二人の子供がいて妻は戦場から帰還のたびに旅に夫の心が変調をきたしてくるのを感じ、戦場に行かないようにと訴える・・。戦場と家庭、クリフは妻も子供も人一倍愛しているのだが、9.11に衝撃を受け祖国愛に燃えて、さらに死んだ戦友の復讐のために、父から教わった牧羊犬の使命を果たさずにいられない・・。この心の相克、なにしろいまは激戦の真っ最中に携帯で本国の妻と会話できる時代になっていて、妻の耳には戦場の爆発音が直に聞こえるのだ・・。戦場で母親が子どもに対戦車用の手りゅう弾をわたすのを目撃するとその子供を撃たざるを得ないのだ・・。一介の兵士だからこのイラク戦争の意味とかは考えないのは普通だろうが、荒廃した街での酷薄な市街戦を観ていると、この戦争なんなのかと自然に疑問がむくむくと湧いてくるし、今の中東の戦争の現実をまるで自分がそこにいるように触感させるイーストウッドの描き方は、中東の戦禍を拡大させたイラク戦争の誤謬を肌で感じさせる・・。クリフはそれでも生きて帰り戦場には行かないことになるのだが、ラストは意外な・・終わり方をする・・。いままでのイーストウッドの「父親たちの星条旗」や「グラン・トリノ」も米兵の心の傷を描いてきたが、かならず、映画としてそれを癒すカタルシスがあった・・。だが、この映画にはそういうカタルシスはない、それほど今の戦争はむごいということんあのだろう、昔子供のころは映画を見終わり外の出ると、外の景色がまったく違って見えたものlだが、この映画を見終わった外に出ると、新宿の街が違って見えた・・・。
・文藝春秋」で芥川賞作品の小野正嗣「九年前の祈り」、「新潮45」で渡辺京二「父母の記」を読む・・。

by engekibukuro | 2015-02-23 06:11 | Comments(0)  

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