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3月17日(火)M「黒塚」こまばアゴラ劇場

 監修・補綴:木ノ下裕一、演出・美術:杉原邦生
 評判の木ノ下歌舞伎を初めて観た。どういうものか。”木ノ下歌舞伎の『黒塚』は、主人公の老婆を単に伝説の中の鬼女ではなく、一人の人間として描き直し、その対比として僧侶を描くことで、現代を生きる私たちが抱える問題を投影するドラマとして描き直しました。現行歌舞伎を現代劇の俳優が完全にコピーするところから造り上げた、現代語と歌舞伎言語を行き来する台詞と、舞踊劇ならではの美しい型がふんだんに取り入れられた舞踊シーン、そして、小さなあばらやから月が浮かぶすすき野原まで変幻自在の空間が、ただの伝承ではなく、現代に息づく大きな物語へ誘います”(チラシより)。この「黒塚」は昭和14年に初代猿翁によって創作・初演された近代の新作舞踊劇の金字塔と言われた作品だ。東北地方に伝わる鬼女伝説に想をえた能「黒塚」を原作とする。2013年に初戦された芝居だそうだが、今回の俳優は、夏目慎也、福原冠、大垣友哉、北尾亘、武谷公雄。夏目のほかの俳優は初めて観る俳優だが、なにより、この俳優陣の演技の爽やかさがいい、如上”-”の文の目標が浮かび上がってきた舞台だった・・・。これからが楽しみだ・・・。
・古処誠二「中尉」(講談社)を読んだ。第二次大戦で日本が英軍を追い出して、ビルマ(今のミャンマー)を占領していた時の浅物語・・。ある村にペストが発生して、その村の防疫と蔓延を防ぐために派遣された軍医の伊与田中尉を巡る逸話を、中尉の護衛のためについていった軍曹の目から語られる・・。ビルマというと竹山道雄の「ビルマの立琴」を思い出すが、あの話とはまるで違うが、ビルマという敬虔な仏教国の雰囲気は共通している。おどろくのは、1070年生まれの著者の史料精査の凄さだ。ここまで日本軍の内情や機構を調べあげ、当時のビルマのな内情、ビルマ人の資質をもきちんと納得させる描き方で書き、日の本敗戦が迫ってきた当時の雰囲気を彷彿させる筆力には感嘆した・・。この中尉はペストを終息させたあとに、ダコイという武装強盗団に拉致される・・。この事件の謎を解くのがこ小説の主眼で、中尉は日本敗戦後も自ら望んでビルマに残ったのか・・。軍曹はあれこれ思案する、この軍曹の思案のうちに、日本の標準的な戦争への、祖国への、天皇への気持ちが立ち昇ってくる、地味だが無性に的確さを感じさせる小説だった・・。

by engekibukuro | 2015-03-18 09:42  

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