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4月10日(金)★M「小林一茶」★★S「麦ふみクーツエ」

★作:井上ひさし、演出:鵜山仁、こまつ座、紀伊国屋ホール
 井上ひさしの数々の舞台で、この「小林一茶」の初演の舞台のラストシーンほど強烈な印象を残した芝居はなかった。一茶は、さんざん苦難をなめた江戸を最後に”へど”と言い捨て、故郷の奥信濃のへ戻るのだが、この一茶の思いと、東北生まれの井上自身の東京への憎悪のようなものと重なって感じられたのだ。だが、今回のこの芝居への興味は、自分が下手な俳句をつくり、句会の末端にいたりするので、一茶そのものの生涯だけではなく、一茶をめぐる江戸の俳人の暮らしっぷりや、生き方に興味がつのり、井上のそういう面でもの調べの綿密さ豊かさに感服したのだった・・。江戸の俳人がどうやって生活していたのか、かねてから知りたっかたのだが、この芝居で解ったのは、江戸の俳人には”業俳(ぎょうはい)と遊俳(ゆうはい)”の2種があって、業俳とは、俳句で生計を立てている者のこと。いわば職業俳諧師といってもよく、遊俳は他に職業をもっていて、俳句はあくまで心を遊ばせるために行っている人のことを指す、そうだ。業俳は金持ちの遊俳の家の連句の座に加わり、指導したり、庭掃除したりして報酬をえて暮らす・・。驚くのは業俳がなんとか暮らしていける、頼りになる遊俳が日本中にいたこと、それほど五七五の短詩形の俳句が、日本人の生活に浸透していること、それは現在までも業俳はいるのかしらだが、綿々と継承され散る。この芝居も遊俳の江戸の札差し、金持ちの夏目成美の家での盗難事件に一茶が被疑者扱いを受けた話が軸になっている。江戸を去り、苦難の人生は享年65歳、生涯の作った句は約2万句、芭蕉が2、3千句だというから、その数の多さはおどろくべきもので、その数の多さだけでない秀句がたくさんある大俳人だ・・。この井上の芝居は一茶の生涯を描いて余すところがない・・。”ぽっくりと死ぬが上手な仏哉”。
★★原作:いしいしんじ、脚本・演出:ウオーリー木下、音楽監督:トクマルシューゴ、シアターBRAVA!
世田谷パブリックシアター
 舞台への案内人は松尾貴史、主役は渡辺豪太、観客に音の出るモノの持参をたのんだ、賑やかな音楽劇・・。渋さの魅力が横溢した尾藤イサオ、植本潤というベテランが舞台を締めて、田中利花も強烈な舞台のアクセント・・。場違いになるのはそうなんだが、せっかくの尾藤、田中の歌を聞きたかったな・・・。

by engekibukuro | 2015-04-11 10:48 | Comments(0)  

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