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8月18日(火)椹木野衣「後美術論」(美術出版社)

椹木野衣の618ページの大著。「後美術とは」 「美術や音楽といった既成のジャンルの破壊を行うことで、ジャンルが産み落とされる前の起源の混沌から、新しい芸術の批評を探り当てる試み。例えば、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの活動を同じ「後美術」(アート)と呼ぶこと。ポピュラー音楽と前衛美術の枠組が外されて、二人のアーテイストとなったジョンとヨーコによる「音楽と美術の結合」-。このジャンルを溶解させる婚姻kら授かる創造の地平が「後美術(ごびじゅつ)」である。
 オノ・ヨーコは”これまでのいわゆる芸術概念とは根本的に反対の考えなんです”と言う。
「”空の美しさにかなうアートなんてあるのだろうか”」と問う彼女(ヨーコ)が、<それでもアートというとき>、それは従来の美術作品とはまったく異なっているはずだということがわかるだろう。彼女は、文字どうり空の美しさのほうが人為的なアートよりも価値があるものとして提示している。重要なのは、そのことを知るためのきっかけを、「とくに私から(作品を)買わなくてもどこでも手に入る」ものを通じて、私たちに気築ずかせることにある。が、もしも、人がいったん「空の美しさにかなうアートはない」ということを知ってしまえば、すべての人為的アートは無効になってしまう。けれど、おそらくそちらのほうが真実なのだ。私も、オノ・ヨーコの「空のアート」を通じて、「空の美しさにかなうアートがこの世にあるとは思えない」と心底思うようになったひとりだ。ある意味、それは人の人生では当たり前のはずなのだが、私たちはそことになかなか思い当たることができない。
だけど、「それは決してむずかしいことじゃない」。そう、オノ・ヨーコは言っている。」。
 オノ・ヨーコのビートルズに与えた影響力はどろくほどで、そのビートルズが20世の音楽、美j術の与えた影響力たるやすさまじいいもので、それは稀代の殺人鬼マンソンへの不幸な妄想へも刺激した、それらの詳細がこの本で微細に描かれて、ほかに取り上げられている音楽家、美術家は私はほとんど知らない。しかし、この後美術と命名されたジャンルなきジャンルと社会とのかかわりを、椹木はフクシマの原発事故の衝撃を根底に据えて描く熱情と、その文体の魅力が、この大著を読ませてしまう魅力で、やはり椹木という人は凄いとあらためて思った。

by engekibukuro | 2015-08-19 10:35 | Comments(0)  

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