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9月16日(水)S「天邪鬼」(作・演出:中屋敷法仁)

 柿喰う客  本多劇場
 近年評価が目を瞠るような高まっている、劇作家・演出家の中屋敷法仁と彼が代表を務める演劇ユニット柿喰う客、中屋敷の昨年の青山円形劇場ファイナル公演の野田秀樹の「赤鬼」の演出など、野田自身の演出より面白かったとっても過言ではないくらいの精彩に満ちた演出だった。今回の1年ぶりの新作は渾身の力作で舞台は熱気がみなぎっていた。まずは、登場人物の紹介で、半ズボンをはいた玉置玲の桃太郎を中心におじいざん、おばあさん、イヌ、サル、キジが登場、それを七条まゆみ、長島敬三、大村わたる、葉村あすか、それに中屋敷自身が出演する。桃太郎が指をつきだし、この指とまれと連呼する・・・。それは、戦争ごっこをして遊ぶ5歳児たちが、本物の戦争に送り込まれる・・。人差し指を銃にみたてて「パン、パン、パン」と撃つ真似ををしているうちに、指先から弾丸が飛びだすようになる、という話・・。つまり、大筋は子たちの戦争ごっこではあるが、桃太郎以外の人に知られたたくさんの昔ばなし、童話など、シンデレラや三年寝太郎その他もろもろの物語が連呼、引用され、それについての子どもならではの考察が、あたかもエンドレスに続き、この子供の戦争ごっこを表立てての演劇での現実とフイクション、イマジネーションの諸相を取り上げているのだと感じてくる。それは中屋敷がパンフのインタビューで語っていることに符合する。”10年以上演劇をやってきた中で、だんだん自分の本音と建前がわからなくなってきているんですよ。それはある意味、自分の本音を蔑ろにしていたということなんだろうと思う。だから「天邪鬼」では「演劇作品」として観客に観てもらうこと前提にとしないで、台本を書いているんです。”・・・だから中屋敷の個人的思いが詰まり過ぎていて、しつこい、くどいという側面があり、役者陣がまったそんこと忖度しないで演じるからなさらだが、それでもかけねなしに立派な「演劇作品」だった。演劇は残ったのだ・・・・。

by engekibukuro | 2015-09-17 10:41 | Comments(0)  

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