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10月2日(金)「花森安治伝」津野海太郎 新潮社

 津野海太郎の自伝物、坪内逍遥、ジェローム・ロビンス、植草甚一、今回の花森安治、ほんとうは植草甚一が一番興味があるのだが、これは未読で楽しみにとっておいて・・・、この花森伝も素晴らしい自伝だった。この類まれな日本男児のあれこれへの感想は雲のごとくできりがないので、晩年(73年)の文藝春秋に掲載された文章を写す。
 ”このへんで、ぼくら、もう頭を切りかえないと、とんでもないておくれになってしまいそ
うなのだ、もう、<国をまもる>なんてことは、ナンセンスなのだ。
<地球>をまもらねばならないのだ。
どっかの国が攻めてきたら、どうする。
この国の山河をどうする。
なんて、あいつはぶつくさ言ってているようだが、それを言おうなら、この<母なる地
球>をどうすかじゃないか。
 まして、反戦だ、戦争反対だ、と絶叫しながら、火炎ビンや爆弾で、戦争をやったつもりで
いる、奇妙な細胞構造の生物よ。
 もう、そんな革命理論は19世紀のものだ。古い。通用しない。ナーンセンスだ。(略)
じつをいうと、ぼくは、地球が崩壊するよまえに死ぬだろう。この目で、二十一世紀
を見届けることは不可能なのだ。(略)
しかし、ぼくより、ずっと若い人ったち。
おそらく、君たちは、世界中がこんなことをそていたら、地球といっしょに亡んでゆく
かもしれないのだ。その日に、立ち会わねばならないのだ。
そういう日に、君たちを合わせる、その責任は、はっきりぼくらにある。”
 津野は、この文章を、イデオロギーでもなんでもなく、じぶんの体験から出発して考え、ひとりでたどりついた結論を平易な文章でズバズバとしるした。と書く・・。

by engekibukuro | 2015-10-03 09:18 | Comments(0)  

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