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10月26日(月)S「地を渡る舟」てがみ座

作:長田育恵、演出:扇田拓也、東京芸術劇場シアターイースト
 初演は2013年、日本中を歩いた民俗学者宮本常一が主人公の劇だ。明治の大富豪渋沢江栄一の孫で、日本銀行副総裁だった渋沢敬三が開設したアチックミュージアムでの、宮本と渋沢の関係を中心に、ミュージアムにおいて渋沢が庇護し研究に専念させた民族学徒の物語・・。1935年から始まる戦前、戦中の話だ。
 再演に当たって長田は書いている。
”本作の上演に再び向かい合うとき、2013年の初演時と作品の質感がまったく異なって感じられることに気づきました。この作品を構想したのは、震災直後、たとえ一瞬でも日本中の一人一人がこの国の未来を考えようとした、そんな体感が芯に残る、そんな時期でした。
 だからこそ常一が愛したうつくしい日本を、私自身もともに視て書き継いでいきました。なにかを信じながら。あれから2年、私たちはいま「新しい戦前」を生きています。常一が記録しつづけた日本を、私たちはたしかに手渡されたはずなのに、手のひらは温かさを覚えているのに、いつしかそれを壊し、喪おうとしています。私がいま立ち返りたい場所は、自分の足で日本の隅々まで歩き、ふれあい、確かめた常一の学問です。2015年、この作品と新たな眼差しで向かい合い精一杯に演劇を創ること、そこから、次の一歩を踏み出そうと思います。”上記の文中、”私たちは「新しい戦前を生きている」”という言葉に含蓄がある。常一の学問が、新しいアクチュアリテイを帯びてきた時代になってきたのだ。日本について新たな眼差しで向わなければならない時代、その眼差しを常一の学問から確かな課題を見出し、それを追うこと・・。今回の舞台は、長田のことばを充分に体感させる扇田の演出であり、渋沢を演じた清水伸、渋沢を演じた俵木藤汰以下の演技陣だった。そしてこの真に独創的な創作の舞台をが輝やかせていたのだった。 

by engekibukuro | 2015-10-27 10:49  

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