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10月31日(土)M「大正の肖像画」劇団民藝

作:吉永仁郎、演出:高橋清祐、紀伊国屋サザンシアター

 37歳で死んだ大正期の才能あふれる画家中村彜の評伝劇。中村のほか、これも33歳で死んだ彫刻家の中原悌二郎、そのほか大杉栄、神近市子と大正時代の芝居にはお馴染みの人が出てきて、その人々はおおかれ少なかれ、新宿のパン屋中村屋の相馬愛蔵・黒光夫妻の庇護のもとにいる。相馬夫婦は、ほかに放浪のリシア人エロシェンコや、インド独立運動の志士ボースもかくまっている・・。中村彜は相馬家の娘の10代の俊子をモデルにして少女像、それに黒光のすすめで俊子のヌードも描き、これが彜の画業の出発点になる評価を得る・・。芝居は、これらの人物たちが出たり入ったりして、大正の一時期を彷彿させる趣向だが、彜が俊子に惚れて、それが不首尾におわるという話も軸に成ってはいるが、どうも芝居全体から訴えてくるものが乏しい・・。それを救ううのが、スライドでバックに映される彜の絵だ。俊子像はじめ、生物、後に住ん目白の風景など、無類の美しい絵画だ・・。やはり彜が日本の近代絵画の無類の俊才だということが、如実に実感できるのだ・・。
 ・パンフで相馬愛蔵を演じた伊藤孝雄の対談で、ほかの役者のときもそうだが、かならず宇野重吉の思い出がでてくる、それほど凄い俳優、演出家だったのだろうが、どうも民藝の役者は宇野の思い出に呪縛されているようで、そこから抜けないと、とつい思ってしまう・・・。かりにいも新劇の伝統を守っている劇団は、時代につねに新しく問いかける芝居でなくてはと思うのだが・・・。
・例年10月、11月は芝居が多いが、今日で月30本目になった・・・。

by engekibukuro | 2015-11-01 09:47 | Comments(0)  

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