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11月19日(木)「ザ・ゼロ」ジェス・ウオルター作

上岡伸雄・児玉竜二 訳、岩波書店

 「美しき廃墟」を読み感心し、その文体と発想に魅せられて遡って「市民ヴィンス」を読み、今回は、これも分厚い477ページの長編小説を読んだ。「ザ・ゼロ」は、2001年の9・11テロ事件がそのまま主題の小説だが、プロットは偏執的な複雑極まりないもので、読み終わっても茫漠として霧に包まれている印象だ。アメリカでは9・11テロ事件のの際、最初に現場に駆けつけた者たちのことをfirst responder(ファースト リスポンダー)と呼ぶ。警察官や消防隊員たちだ。彼らの多くが、ビル倒壊の犠牲者となり、生き残った者たちも心に深い傷を負った。この小説の主人公ブライアン・レミもファースト リスボンダーの警察官だ・・。生きのこって、事件の秘密裡の捜査に加わり、特別な任務を命ぜられるのだが、この捜査の部署がいろいろなセクショナリズムが錯綜して、その上、レミの個人的な女性関係も捜査にからんできて、事件の捜査も、レミ自体も混迷をきわめる・・。一種のサスペンス小説なのだが、あとの「市民ヴィンス」や「美しき廃墟」の一応の起承転結も定かでない・・・。だが、この人の小説の文体には、いくらわかりづらくても、なんとか読み続けようとする魅力がある・・。これも一応、堪能したこになるのかな・・・。

by engekibukuro | 2015-11-20 09:22 | Comments(0)  

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