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11月23日(月)★M「クリスマス解放戦線」★★S「犀」

★作・演出:畑澤聖悟・工藤千夏、渡辺源四郎商店、こまばアゴラ劇場
 渡辺源四郎商店:ナベゲンはついに創立10年を迎えるという。月日の経つのは早いな!よく頑張ってきたな、おめでたい限りだ。それに畑澤は、来年の劇団民藝の2月の本公演に「光の国から 僕らのためにー金城哲夫伝ー」という芝居を書き下ろす。ちなみに秋の民藝の本公演は、中津留章仁と長田育恵だ。
さて、この芝居は、青森県の一切のクリスマスを祝う行事や、ケーキなどのそれに関連する飲食も禁止するという時代の話、ひとつには青森にイエス・キリストの弟が移住してきて布教したという伝説を信じるカルト集団の活動を禁ずる県の条例があり、青森県警はそれに準じて一切のクリスマス祝儀を取り締まる。舞台は、青森の秘かにクリスマスを祝う結社のはなし、合言葉は”赤いトナカイさん・・・”で、それを唱えて集まり、貴重なクリスマスケーキをひそかに運び込む・・。まあ、荒唐無稽の話だが、それを信じさせる青森のローカリテイの魅力と、結社員それぞれの疑心暗鬼を隠しているパーソナナリテイが、これはいかにも畑澤流にイキイキ描かれていて、畑澤特許の”デタラメ世界”の魅力をたっぷり見せた舞台だった。
★★作:ウジェーヌ・イヨネスコ、演出:エマニュエル・ドウマルシー=モタ、パリ市立劇場、F/T15,彩6の国さいたま芸術劇場。
 これは素晴らしい舞台だった。いままで日本では、イヨネスコの不条理劇だとして、ある日街に突然大きな犀が現れて、人々がびっくりして大騒ぎするという、それだけの舞台が大かったが、この舞台はまるで違う。”犀”は、ファシズム、抑圧的なイデオロギーの象徴として描かれ、それをまるで古典劇の様に重厚に演じてゆく。その俳優全員の演技力、効果的な装置、それらが一切合体して、切実で堂々たる対話劇として成立している。なんだか、まるで格が違う舞台で、フランス演劇の伝統、俳優の演技力の質の高さに瞠目するばかりだった。優れた舞台、演劇は不条理劇とかのカテゴリーに関係なく、観客を世界に向かう新しい見方を教えてくれて元気づける・・。これぞ演劇文化の粋だ・・。演劇の無垢の力を強く感じさせてくれた舞台だった。

by engekibukuro | 2015-11-24 07:03 | Comments(0)  

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