人気ブログランキング | 話題のタグを見る

22月2日(火)S「キネマと怪人-喜劇・昭和の世界その2」

作:佐藤信、演出:西沢栄治、音楽:諏訪創、振付:スズキ拓朗、制作:日本劇団協議会「日本の演劇人を育てるプロジェクト」、Space早稲田

 この「キネマと怪人」は「喜劇昭和の世界・三部作」の第二部として、「阿部定の犬」に続いて1976年に68/71黒テントによって上演された。これは佐藤信の代表作だとされている作品で、初演は新井純の主演でそれこそワクワクして観た舞台だった。鈴木忠志の早稲田小劇場、唐十郎の状況劇場と並ぶ、アングラ3劇団のなかで黒テントはその都会的センスが際立っていて、そのセンスで昭和の日本の断面を、ばさっと切り出す佐藤の手腕は素晴らしいものだった。今回の舞台は、そういうオールドファンの記憶とは、ずいぶんと異なるが、演出の西沢が、音楽の諏訪、振付のスズキと合同して、見事に西沢流にこの芝居を現代に蘇らせた。この芝居、怪人二十面相、探偵明智小五郎を狂言まわしに、さまざまなタイプの昭和の変人、みょうちきりんがでてきて、さらにその人物群を回遊させる天皇や満州の将軍などが出てくるが、西沢は人物や事件を、戯曲のシーン々をひたすら演劇的な効果に集約させて、見事なバーレスクに仕立て上げた・・。だから、この芝居に確定的な中心ともいうべきものはないのだが、”観ていて面白い”ことが成立していて、そのなかにアングラ生き残りの井村昂、流山児祥、龍昇が昭和の息吹を吹き込んで、この芝居が昭和はいかに面白い時代で、現在がいかにつまらない時代かを自ずと感じる人間もいることにもなり、さらに重ねるが見事なアングラ復活劇だった。

by engekibukuro | 2016-02-03 09:48 | Comments(0)  

<< 2月3日(水)白井聡「「戦後」... 2月1日(月)森山大道写真展  >>