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3月5日(土)M「葉子」作:金塚悦子、演出;川口啓史

座・高円寺

 「葉子」、”昭和6年、神戸に生まれた久坂葉子は、川崎重工業創始者、川崎正蔵を曾祖父にもち、祖父は男爵、母は元華族という家柄。実家は現在の神戸の名門、北野ホテルだった。早熟な才能を開花させ、18歳で同人誌「ヴァイキング」の同人となり、19歳で「ドミノのお告げ」により、史上最年少芥川賞候補者になる。
さらにかなりの美貌の持ち主。今でいえば、正真正銘のセレブ・・。しかし、そんな彼女は昭和27年の大晦日、阪急六甲駅にて最終急行列車に飛び込み、自殺した。まだ21歳の若さだった。今のように、ワイドショー、ネットやSNSがあったら大騒ぎになってだろうが、当時は翌正月の1月3日の朝刊の三中程に一行の死亡記事が載ったのもだった。
「結末のないお芝居の幕が降りようとした。その幕が降り切らないうちに観客はあくびをして立ち上がった。幕は中途半端なところで、宙ぶらりんにたれていた」(久坂葉子「灰色の記憶」より)と自らの作品に自嘲気味に書いた葉子が亡くなってから、64年の歳月が流れた。”
 舞台は、岩崎加根子が演じる一人住まいの85歳の老婦人の家に、古い女友達の久坂葉子の生涯を研究している女性の孫が取材のために泊りにくる。丁度大晦日の日だ。取材の便がの家がいいのだ。その研究者と葉子を松本紀保が演じる。そこから葉子の短い生涯が辿られる・・。「ヴァイキング」の同人だった島尾敏雄、島尾ミホが登場したり、さまざまな葉子を巡る人々が出てきて、消える、バックには古いシャンソンがけだるげに流れる。そして、阪急六甲駅に最終の急行列車が・・・。葉子の死因?小説が一行も書けなくなった・・。
というが、定かではない。一番印象に残ったのは、80を超えた岩崎加根子の歳をかんじさせない、しっかりした演技だ。久しぶりに観て感服した。

by engekibukuro | 2016-03-06 10:16 | Comments(0)  

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