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3月31日(木)蓮實重彦「伯爵夫人」(新潮4月号)

 蓮實重彦が素晴らしい小説を書いた。
高級ポルノグラフイーだ。300枚一挙掲載をあっというまに読んだ。
「小春はしりの下に手をさしのべ、冷たい指先を音もなく肛門にすべりこませる。何をするのだと二朗が身を起こそうとすると、太股を押さえつけるよいにして動きをとめ、冷えた指もそのうち温かくなってまいりましょうと口にしながら指先をぬるりとさしいれ(以下略)」。ポルノとしての豊かな文章だが、この小説は昭和16年の戦争前夜で終わっている。朝日新聞の文芸時評で片山杜秀は、この小説を、フランスの思想家、ジョルジュ・バタイユの「マダム・エドワルド」と比較している。優れたポルノ小説にして反ファシズム小説でもあるこの小説と、「伯爵夫人」の値打ちもそうした系譜上にあるという。フランス文学者であり、映画評論家としても一家をなし、前東大総長のポルノの形で昭和の命への壮大な挽歌だと思う。80歳にして、このような豊かな小説を書くとは、感歎した。ほかに同じ新潮では岡田利規の戯曲「部屋に流れる時間の旅」を読む。あの大地震をあつかった戯曲で、京都で上演したという、観たかった。朝日新聞の高橋源一郎の論壇時評が終わった。今回も冒頭に藤田貴大の福島で上演した芝居をとりあげていた。論壇時評で舞台や映画を取り上げたとてもユニークな時評だった。

by engekibukuro | 2016-04-01 08:01  

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