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6月1日(水)S「埒もなく汚れもなく」オフイスコットーネ

作・演出:瀬戸山美咲、プロデユーサー:綿貫凜、シアター711

 オフイスコットーネのプロデューサー綿貫は、いままで48歳で水難事故で亡くなった大阪の劇作家大竹野正典の戯曲を9本上演してきた。それまで東京の演劇界ではほとんど知られていなかった劇作家の戯曲を上演して、この作家の実力と魅力を東京の観客に紹介してきた。その努力がじょじょに報われて、大竹野の作品の魅力は、東京の客にも認知され定着してきたのだ。今回の作品は、その綿貫の大竹野への深い思いの集大成として瀬戸山美咲に大竹野の生涯の劇化を依頼した。瀬戸山1年間、大竹野の家族、いろいろに関わった友人知己を取材して、この作品を書き上げた。大竹野を演じるのは、自分も大阪生まれの西尾友樹、妻小壽枝を占部房子が演じた。大竹野は横浜の横浜映画放送戦学校で、今村昌平の元で学んだが、大阪に帰り、劇作家として出発した。この芝居は、大竹野と献身的に夫の演劇活動に献身する妻との生活が主軸だが、大竹野の一筋縄ではいかない性格、登山が人生の重要部分を占める生活、さらにパチンコで給料を
使い果たしてしまうような暮らし、それらの隘路を縫って芝居に夢中になって、それも東京へ出て名をなそうなどという野心とも無縁な人物を瀬戸山はヴィヴィイドに描きだし、西尾はそれを充分に担い通した。破天荒な性格でもあるが、それが人を引き付ける力になって、バイト先の社長にも愛され、演劇活動が許される・・。大竹野の代表作だと大方に目される「山の声」という登山者二人の一人が遭難死した芝居がある。登山という死と隣接した行為に自分を駆り立てる衝動と、無事下山して妻子の元に帰りつましい暮しに戻る、ある意味人間の理にかなった誰にでもできることではない二重性を、シンプルに描いた名作だが、その芝居を書き上げ、妻と共に静かに喜び合うラストシーンは感動的だ。綿貫の大竹野のオマージュはみごとにj成就sたのだ。

by engekibukuro | 2016-06-02 09:50 | Comments(0)  

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