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9月27日(火)

 ・一日医科歯科大の化学療法室で点滴治療・・。
津島佑子「狩りの時代」読了。癌で亡くなった津島の遺作だ。主人公絵美子の兄はダウン症で、15歳で亡くなった。兄を愛していた絵美子は、従兄の誰かが「フテキカクシャ」という言葉を聞いた。
障害を持つ人間を、社会に不必要な「フテキカクシャ」だという意味だと後年絵美子はするのだが、
その従兄の誰かは、戦時中ヒットラーユーゲントが、住んでいた甲府の駅に止まって、式典を行ったことを覚えている。ヒットラーは、障害者も老人も社会に役に立たない「フテキカクシャ」だとして殺したのだ。この小説はこの「フテキカクシャ」ということがらをとことんこだわった小説で、それは愛する兄を思ってのことだが、それによって人間の心の深層に迫っている。それだけでなく、この小説はさらなる広がりをもって、一つの上流といえる家族の歴史を複雑に描いている小説だ。そして、津島の小説にみなぎる光輝く文章が素晴らしい。癌に侵されいながらこれだけ、そんなことを微塵も感じさせない勁い文章で、津島の文学を老年になって知ったことが返す返すも残念だった。太宰治の遺児である津島が、父親の文学と対決したとわれていることが、この小説で強く感じられた。
それとヒットラーの時代に生まれたら、社会に役に立たない「フテキカクシャ」であるオレのような老人は殺されたのかとおもうと慄然とした・・。

by engekibukuro | 2016-09-28 09:46  

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