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2月18日(土)M「蝶々夫人」S「たくらみと恋」

プッチーニ歌劇「蝶々夫人」(指揮:ミヒャエル・バルケ、演出:笈田ヨシ)東京芸術劇場コンサートホール。昭和8年生まれの演出のヨシ笈田はこの名高いオペラを敗戦直後の日本に重ねた。進駐軍の兵隊にガムをもらい、”ギブミーチョコレート”と綺麗な洋服を着た娼婦と歩く兵隊さんを追いかけた時代の子供たちに私も入る。蝶々夫人はアメリカは素晴らしい国だと本気で思い、ママゴトのようなつもりで結婚したピンカートンを本気で愛し、アメリカへ帰国し、アメリカ人と結婚したピンカートンを疑わずに心から待っていたのだ。だから、待っている間の蝶々夫人は戦時中の服装のもんぺをはいていた。もんぺをはいた蝶々夫人(小川里美)の絶唱「ある晴れた日」はなにか肺腑をえぐるように美しく、劇場を圧する。舞台には蝶々夫人の住まいには星条旗が立てかけてあり、ラストに子供を連れていかれ、懐剣を見つめる夫人、そのとき星条旗が倒れるのだ。このオペラは、日本とアメリカのアンビバレンツを見事に舞台化した傑作だった。
「たくらみと恋」(作:フリードリッヒ・フォン・シラー、演出:レフ・ドージン、ロシア国立サントベルグ マールイ劇場、世田谷パブリックシアター)
 ドージンの演出の芝居は、ソ連時代、日本にきて銀座セゾン劇場で上演した「兄弟姉妹」「夜明けの星たち」などを観ていた。その時代の芝居と比べると、この舞台は端正で落ち着いた芝居だった。だが、ソ連時代の芝居のほうがなにか訴える要素が多かった気がする。芝居にもよるのだろうが、ソ連崩壊のあとの時代の芝居として、時代と演劇の関係を考んがえさせてくれた貴重な舞台だった。

by engekibukuro | 2017-02-19 10:40 | Comments(0)  

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