人気ブログランキング | 話題のタグを見る

2月25日(土)M「原理日本」青年劇場

作:久板栄二郎、演出:大谷賢次郎、青年劇場スタジオ結(YUI)

 この芝居は1970年に劇団俳優座に久板が書き下ろしたもので、それ以来47年ぶりの上演だそうだ。久板という劇作家は、戦前のプロレタリア演劇の書き手であることと、黒沢明の映画の共同シナリオライターとしてしか知らなかった。が、この芝居、とても面白かったし、今日的でもある芝居だった。主人公は右翼の論客、蓑田胸喜をモデルにしたもので、この蓑田が、戦前の京都大学の滝川教授弾劾事件や美濃部達吉の天皇機関説排除の動きのもっとも急進的な役割を演じたことが、この芝居でよくわかった。その蓑田の家族関係や、そのころのジャーナリズムの様子などもヴィヴィッドに描かれていて、周囲からその言動が浮いていて、その浮いているところをもっと上の権力から利用されている様子もきちんと押さえられている作品だった。これも青年劇場の演技陣の成果で、とくに蓑田(劇では猿田彦市)を演じた島本真治がこの人物を活写していた。興奮するとすぐ卒倒してしまう、いささか滑稽な人物で、戦前の右翼の人物像をありありと舞台に乗せたのだ。そして、この芝居は、この前読んだ、片山杜秀と島薗進の共著「近代天皇制」にも呼応していて、民主主義と天皇制の問題で、いまでも蓑田ほど極端ではないにしろ、蓑田的なものの残響がいまの日本にも伏在していることを感じさせた舞台だった。青年劇場が、この劇作品を掘り起こしたことはおおいに評価されるべきことだ。

by engekibukuro | 2017-02-26 09:38 | Comments(0)  

<< 2月26日(日)「革命伝説・宮... 2月24日(金)M★「PARADE」 >>